プリンターには印字方式によりいろいろな種類がありますが、ここでは現在汎用的に使用されているインクジェットプリンターとレーザープリンターについて、寿命あるいは耐用年数の面から考察してみましょう。プリンター単能機のみとして、ファックスや電話機能を有するいわゆる複合機は除きます。
インクジェットプリンターは、デジタル信号によってインクをノズルから印刷媒体である紙に直接噴射させます。
レーザープリンターは電子写真方式と呼ばれる方式で、レーザーを光源としてデジタル信号でスキャンさせ、静電気により感光体に潜像を形成させ、潜像にトナーを付着させて顕像にして、紙に転写させます。
レーザープリンターは高速で大量印刷に適し、企業向けでしたが、最近は安価で小型のレーザープリンターが出回り、個人でも購入される方が多くなっています。インクジェットプリンター、レーザープリンター両者ともモノクロとカラーの両方の機種があります。
下記の記事にインクジェットプリンターとレーザープリンターの違いの比較をまとめておりますので、詳細な違いが気になる方は合わせてご覧ください。
記事:『インクジェットプリンターとレーザープリンタの違いを徹底比較!
』
レーザープリンターは企業向けが多かったため寿命よりも耐用年数ということばが使われていますが、ここでは寿命を用います。国税庁による減価償却資産の耐用年数では、プリンターは事務機に入り、5年です。
参照元:国税庁 耐用年数
家電製品には補修用性能部品の保有期間が定められていますが、プリンターにはありません。メーカーは減価償却資産の耐用年数の5年を参考にして、メーカーあるいは製品によりますが、5~7年を部品の保有期間にしています。
この5~7年が、メーカーのいう寿命になります。償却資産にならないものは制約がありませんから、部品の保有期間はメーカーの一存になります。実際は、プリンターの寿命は、プリントする枚数で目安を決められます。
インクジェットプリンターの寿命を決めるのは、インクを噴射するヘッドの劣化、軸受けやスライドガイドの摺動部の摩耗です。インクジェットプリンターの他の構成要素には、紙を送る機構とヘッドを動かす機構があります。
廃液パッドあるいは廃液タンクも欠かせない部材です。エレクトロニクスの面ではコンピュータとのインタフェースと制御装置があります。ヘッド、廃液パッドあるいは廃液タンク以外は消耗部品でありません。
設計上は、プリントする枚数で寿命を決めることになります。上記の機構部品が壊れたときが寿命になると考えてよいでしょう。
ただし、これらの部品は、機構部品を含めて、すべて交換可能です。プリントする枚数で、A4サイズ2万枚が寿命になります。インクの吐出の仕方で各社に違いがあります。寿命の面で理論上は方式によって差がありますが、実際上で方式による違いが出る要素は少ないといえます。
エプソンのプリンターのヘッドは、ピエゾ方式を用いています。ピエゾ素子は電圧をかけると変形する性質を有し、その変形によりインクを吐出させます。
熱がかからないのでその分、劣化は少ないといえます。ただし、インクが固まっても熱による回復がないためにクリーニングの回数が多くなり、インクの使用量が多くなります。ヘッドの構造が複雑なために交換しにくいことが欠点として挙げられます。寿命の面から考えますと優利といえます。
キヤノンのプリンターは、バブルジェット方式と呼ばれます。ヘッドに熱を加えて、液体インクを瞬間的に蒸発させて形成されるバブル(泡)によりインクをノズルから吐き出させる方式です。
ヘッドには常に熱がかかり、劣化しやすいといえます。ヘッドが劣化したら交換すればよく、交換は難しくありません。
ブラザーのプリンターは、エプソンと同じピエゾ方式です。ブラザーはインクジェットプリンターでは後発で、シェアも高くはありません。
レーザープリンターで強みを有しているので、そのプリンター製品の技術を生かして、特色を出しています。例えば、インクジェットプリンターでA3用紙の印刷可能の製品を上市しています。
寿命の点を考えれば、ブラザーだから格別寿命を延ばす技術は見当たりません。しいていえばレーザープリンターと共通的な機械部品で耐久性があるものがあるということが挙げられましょう。
インクジェットプリンターの寿命は、プリントする枚数で2万枚ととらえてよいでしょう。毎日使って1日10枚です。メーカー側はプリンターの製造終了後サービス部品を保有するのが5年としているところが多く、そのときは完全に寿命になります。インクジェットプリンターは、個人使用が多く、パソコンの進歩の影響を強く受けます。パソコン側のソフトが5年すれば大きく変わるので、インクジェットプリンターそのものの寿命よりも、ユーザー側が寿命を決めてしまう節も無きにしも非ず、といえます。
レーザープリンターの構成要素は、感光体、帯電ユニット、レーザーとスキャンを含む露光ユニット、現像ユニット、転写ユニット、定着ユニット、紙の搬送ユニット、および電気制御系です。
消耗品は、感光体,トナーあるいはトナーカートリッジ、定着器ローラー、給紙ローラーです。これらのユニットが壊れたときが寿命になります。
ただし、これらのユニットはすべて交換可能です。レーザープリンターは、インクジェットプリンターに比べると寿命が長いといえます。元々レーザープリンターは業務用から出発しているので、耐用年数は5年と設定されていて、プリントされる枚数も多く、5年で5万枚が要求されていました関係で、機械がその仕様に対応してきた経緯があります。
エプソンのレーザープリンターは、ページプリンターと呼んで、大量の枚数を処理します。エプソン自身で製造してなく、富士ゼロックスのOEM製品です。
富士ゼロックスのレーザープリンターの寿命は、製品によりますが、家庭用では10万ページまたは5年の早い方となっています。富士ゼロックスは、メンテナンスの関係でしょう、家庭用には販売していません。
参照元:富士ゼロックスHP
キヤノンは、レーザープリンターの複合機を多く販売しています。小型のレーザープリンター単能機では、寿命ということばを使っていませんが、各ユニットの交換目安の時期を、例えば、定着器ユニットの交換目安は15万ページ、というように示しています。
参照元:CanonHP
ブラザーのレーザープリンターの寿命に関しては、各機種によって耐久枚数を、例えば、耐久枚数5万枚、というように記しています。
参照元:ブラザーHP
リコーのレーザープリンターの寿命に関しては、ブラザーと同様に、各機種によって印字枚数を、例えば、印字枚数10万枚、というように記しています。
参照元:リコーHP
各社ともレーザープリンターは業務用途が多いためでしょう、耐用年数5年というのが寿命になります。
エプソン、キャノン、ブラザー、他のほとんどのメーカーとも、製造年月日をトナーのパッケージにラベルシールやスタンプなどで記載しています。トナーの寿命は、推奨使用期限として製造年月日より2年6ヶ月、すなわち30ヶ月までにしています。
トナーは高湿および直射日光を嫌います。開封前であっても保管環境として85%RHを越える湿度と直射日光は避ける注意が必要です。
これまで述べましたことを整理します。プリンターの寿命は年数でいうと5年で、これは償却資産の耐用年数から来ていて、メーカーも保有部品を製造終了後5年にしていることでもあります。
プリンターが寿命までに印刷できる枚数は、A4サイズの紙で、インクジェットプリンターでは2万枚、レーザープリンターでは5万枚です。部品交換により印刷できる枚数が増えます。
プリンターが寿命近くなるとどんな症状が見られるでしょうか?
箇条書きにしてみましょう。
・電源が入らない
・可動部分が動かない
具体的には、
インクジェットプリンターでヘッドが動かない、
レーザープリンターでレーザー光が動かない
などがあります。
・稼働中に異音がする
具体的には、
インクジェットプリンターでヘッドの摩耗音がする
レーザープリンターで定着ローラー、他のローラーの回転がおかしい
という症状が見られます。
・画像が出ない、画像にかすれがある、画像のずれがある、画像が乾かない
この症状の背景と原因は、
インクジェットプリンターでインクを補給しても変わらない
レーザープリンターでトナーが供与されない
レーザープリンターで定着がされない
などが考えられます。
・信号を入れてもプリンターが応答しない
この場合は、プリンターの寿命ではなく、パソコンを新しくしたとき、プリンターがパソコンの新しいOSに対応しないためということがあります。
プリンターの寿命を縮める原因にはどんなことがあるのでしょうか?
インクジェットプリンターでキーとなる部分ですが、最も問題を起こしやすい部分です。
インクジェットプリンターのインク、レーザープリンターのトナーはいずれも高湿で劣化します。また、ほこりが多い場所では、紙の搬送系に影響します。
使わなければ長持ちするかといえば、そうでなく、使わないと長持ちしないといってよいです。長期間電源を入れないでおくと、インクの目詰まりの因にもなりますし、電気系にも影響します。
プリンターに限りませんが、機械は基本的にクリーニングを怠らなければ長持ちします。プリンターでは、具体的には以下のようにします。
方法①インクジェットプリンターの場合、定期的にヘッドのクリーニングを行う
方法②高湿や埃の多い環境を避けて設置する
方法③プリンター内部を定期的に清掃し、ほこりやごみを取り除く
方法④不使用の期間をなくする
方法⑤インクやトナーは純正品を使用する
プリンターに寿命と思われる症状が現れたとき、修理した方がよいでしょうか?それとも買い替えた方がよいでしょうか?
まず、使用年数とプリントした枚数を確認します。使用年数が5年を経過していたら、インクジェットプリンターでもレーザープリンターでも修理をせずに買い替えた方がよいでしょう。プリントした枚数が、インクジェットプリンターでは2万枚、レーザープリンターでは5万枚を超えていたら、買い替えた方がよいでしょう。
いずれにも当てはまらないとき、交換部品の価格や修理見積り金額を見て決めるとよいです。交換部品があって自分で交換でき、その交換部品の価格があまり高額でなければ、例えば1万円以下ならば、自分で修理するのがよいでしょう。
交換部品の価格が高額であるとき、また修理見積りをとってみて、その見積りが高額なとき、例えば1万5千円もするならば、買い替えた方がよいでしょう。
購入金額が2万円以下のプリンターでしたら、買い替えの方が安くつくと考えてよいでしょう。レーザープリンターで、交換しなければならないユニットが複数になるようでしたら、買い替えをお勧めします。
プリンターの買い替えで検討すべきことは、価格が安いことか、新モデルにするかということがあります。
価格が安いときを狙うならば、新規モデルが発売される前の旧モデルの在庫処分のタイミングです。新モデルが出るのは、大体9~10月ですので、8~9月が旧モデルでもよいとした場合に、安く買える時期になります。
新モデルにしたいという場合、新モデルは発売から半年くらいは価格を保ちますから、価格的に安くなるのは5月くらいからが安く買える時期になります。
メーカーあるいは販売店のキャンペーンの時期を狙うと安く買えます。これは注意しておかないと分かりませんが、新入生、新入社員を対象にした、3~4月頃とみてよいでしょう。
この時期では新モデルが対象になるでしょう。年末年始はあまり安くはないと見た方がよいでしょう。
時期ということにはなりませんが、安く買うための方策としては、メーカーを選ばないという選択があります。
販売店の状況に左右されますので、販売店に直接出かけてみなければなりません。
不要になったプリンターは、リサイクルにするか、ごみとして捨てるかになりますが、寿命がきたプリンターは捨てるしかありません。
プリンターは、家電リサイクル法の指定対象外です。粗大ごみとするか不燃ごみとして捨てることになります。自治体により、取り扱いが異なりますので、自治体に相談するのがよいでしょう。自分で分解してしまえば、不燃ごみとして捨てることができます。
回収業者に持って行ってもらう手もあります。このときは基本的に回収費用がかかります。
寿命の点を考えると、特別にこのプリンターの寿命が長いというのは必ずしも言い切れません。レーザープリンターの方がインクジェットプリンターよりも長持ちすることは言えます。以下には、カラー対応がある、2万円クラスのプリンターを紹介します。
エプソンの高画質インクジェットプリンターです。
複合機と名前がついていますが、スキャナー機能を有することです。スキャナー機能はほとんどの機種についています。寿命の点では2万枚を全うできるタイプです。
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キヤノンのインクジェットプリンターで、高画質で、手軽さがあります。寿命の点で2万枚をプリントでき、エプソンの製品と競合します。
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ブラザーのレーザープリンターです。カラー対応ですが、スキャナー機構もコピー機能もありません。シンプルな機種です。耐久枚数は10万枚です。
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インクジェットプリンターとレーザープリンターの寿命をみてきました。寿命は5年です。寿命までにプリントできる枚数は、A4サイズで、 インクジェットプリンターで2万枚、レーザープリンターで5万枚です。
プリンター選びは、用途から考えるでしょうが、写真を含む画質ではインクジェットプリンターを、大量プリントであればレーザープリンターを選ぶことになると思います。
どちらも適正な取り扱い、特にクリーニングを怠らなければ、寿命を全うさせる、あるいは寿命を長持ちさせることができます。
他にも気になる家電製品の寿命について解説している記事がいくつもあるので、気になった方はぜひ読んで見てください。
更新日時 | 更新内容 |
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2018/08/03 | 関連記事の更新 |