懐中電灯やおもちゃなど乾電池の入った電気器具や電気機器で、電池を入れたまま使用しないで長い間放置していたのを開けてみたところ、電池を受けるばねが緑色に変色していたり、電池に白い粉がついていたりする経験は多くの人がおもちでしょう。
電池についている白い粉は何でしょうか?長期間の放置でなぜ生じて来るのでしょうか?白い粉の危険性はないのでしょうか?医者にかかる必要があるでしょうか?どうやって掃除するのが適切でしょうか?電池の種類によらず同じものでしょうか?予防は出来ないでしょうか?
そのような疑問に答えます。
乾電池の構成は、金属の正極端子/炭素棒の集電体/二酸化マンガンの正極/電解質/亜鉛の負極/金属の負極端子になっています。
負極と電解質との酸化反応で発生する電子が移動し正極と電解質との還元反応で電気が発生します。すなわち、乾電池は化学物質の化学反応で電気を発生させます。乾電池で電解質が重要な働きをしますが、電解質は液体で、漏れが生じることがあります。
白い粉は、液体の電解質が電池の外側に漏れて空気中の二酸化炭素と化学反応を起こして生じる物質です。電解質自身は白くありませんが、反応物が白い粉になります。電解質の漏れがなければ、白い粉が電池の外側についているという状態にはなりません。
電池の白い粉の発生の元は電解質の液漏れです。白い粉の発生原因は、液漏れの原因につながります。液漏れの原因を探ってみます。
未使用の電池あるいは使用済みの電池で長期間作動させないものでも、液漏れが発生します。電池の外側の金属が腐食したときです。放置環境にも依存します。高温や湿気によりさびが生じて腐食が進む場合もあります。
使用している電池の電圧が下がって使えない状態を過放電と呼びます。電池内の水素が発生し、内圧が上昇します。破裂の心配がありますので、電池は安全性を確保するために一部分を薄肉化して安全弁を形成させています。過放電で内圧が上がると安全弁が働き、その結果液漏れが発生します。この原因による液漏れが最も多いといわれています。
過放電は電池を電気機器の中に放置しておく場合も起こります。また、古い電池と新しい電池を混ぜて使用しても起こる場合がります。
電池の外側の金属製の正極端子あるいは負極端子が、外部の金属とショートすると電池が高温になり、液漏れにつながります。
電池の白い粉は電解質が二酸化炭素と化合してできた化合物で、化学的に安定な物質になっていますので、それ自身は無害です。白い粉で乾燥状態であれば、触っても問題ありません。
手についたら布で拭きとるとか、水で洗い流すとかして問題ありません。しかし、元が電解質ですので、全面的に安全ではありません。反応しきれていない電解質が残っていたり、水にぬれると溶けて危険な水溶性になったりする場合があります。
電解質が強アルカリの水酸化カリウムですので、液漏れの液には絶対に体を触れてはいけません。眼に入ると失明します。白い粉は、水酸化カリウムが空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カリウムになったもので、これは無害ですが、水にぬらすと水酸化カリウムとなり、これは強アルカリで危険です。皮膚には絶対に触れないことです。
電解質は弱酸性の塩化亜鉛の水溶液で、アルカリ電池の水酸化カリウムほどの危険性はありませんが、毒性物質ですので、液漏れの液には手を触れないようにします。マンガン電池の白い粉は炭酸亜鉛で、危険性はありませんが、亜鉛化合物ですので、注意は必要です。皮膚には触れないことです。
アルカリ電池、マンガン電池、いずれの白い粉に万が一触ってしまったら、急いで水で流し去ってください。特にアルカリ電池の場合ではよく洗ってください。衣服に漬けたときも同様で、洗い去ってから、通常の洗濯にすればよいです。
電池に白い粉が発生した時にはどんな処置をすべきでしょうか?
白い粉がついた電池は、二度と使用しないでください。廃棄処分にします。廃棄は、ビニール袋に入れて、自治体の指示に従った捨て方をしてください。
白い粉のついた電池の相手方の電気器具あるいは電気機器も白い粉がついていたり、緑色に腐食していたりしています。これに対する処置は、水をつけて堅く絞ったボロ布でよく拭きとります。手袋を使用してください。
ボロ布は一度使って捨てます。洗って再度使うことはしないでください。さびは紙やすりで落とします。紙やすりの粉を吸わないようにします。マスクをつければ安全です。その後、ぼろ布で拭きとります。
電池の白い粉が床にこぼれたときです。衣服についたときと同様にします。ボロ布で拭きとり、その後通常の掃除をします。
乾電池には、大きく分類してアルカリ電池とマンガン電池とあります。白い粉は同じでしょうか?
構成は、二酸化マンガンの正極/水酸化カリウムの電解質/亜鉛の負極となっていて、二酸化マンガンと亜鉛の量が、マンガン電池よりも多くなっています。このためパワーと容量が大きく、長寿命になっています。
用途には、大電流で連続する機器で、例えば、レコーダー、携帯ラジオ、電動おもちゃ、ガスコンロの点火などが挙げられます。白い粉は、すでに述べましたように、水酸化カリウムの電解質の液漏れが空気中の二酸化炭素と化合した生成物です。
構成は、二酸化マンガンの正極/塩化亜鉛の電解質/亜鉛の負極となっています。使用を休止すると電圧が回復するという特徴があります。
このため電流が弱くても使用できる電気器具あるいは電気機器で、スイッチのオンオフが多いものに適します。例えば、時計、リモコン、タイマー、懐中電灯などなどです。マンガン電池の白い粉は、塩化亜鉛電解質と二酸化炭素の反応化合物です。
乾電池から白い粉が出ないようにするための予防方法はあるでしょうか?予防方法は、液漏れをなくすることで、乾電池の使用状態を把握することになります。
使用頻度の高い場合、定期的な交換を行うことで過放電をなくすることができます。
電池の購入年月日をおさえておくこと、使用実績記録をつけることなどをして、電池の履歴を把握して、古い電池は使用しないときめることです。
電気器具や電気機器を使用しないときは、電池を外しておくことです。
過放電防止対策の一つになります。
正しくつながないと電源が入らないので、すぐ分かるかもしれませんが、長時間放置しておくと過放電の一因になりますので注意します。
難しいのは電池が新しいのか旧いのかを見分けることですが、乾電池残量測定器でチェックしてみるのも一方法です。
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電池から白い粉が出ているのを見て、びっくりする方がおられるでしょう。これまで述べましたように、白い粉になっていれば危険度はそれほど大きくありません。それほど不安に思うことはありません。対処方法で切り抜けられます。しかし、白い粉を実際触ってしまって、毒物が体に入ってしまうのではないかと心配する方がおられるでしょう。
自分が知らないことに対しては、知ったかぶりをして対処するよりは、素直に専門家に尋ねるという姿勢は大事です。特に、液漏れの液がまだ残っているかもしれませんので、安全サイドで対処していくことは重要です。さらに、液漏れとなっていて液状のものが電池についていて、それを素手で触ったり、間違って目に入れたりした場合は、水でじゃぶじゃぶ洗うという応急手当てをしつつ、医療機関に走ることが適切です。
電池から白い粉が出ていたが、簡単に拭き取れたからまた使うというようなことはしないでください。電池は化学品です。化学反応があることをよくわきまえて対処すべきでしょう。
危険な薬品でも役に立つものは、よく管理されて応用されていますが、白い粉が出るのは異常事態ですので、異常事態の対応をしなければなりません。白い粉が出ていても極度に不安になることはありませんが、白い粉の取り扱いには十分注意する必要があります。