昔から『CPUの載せ替え』『ビデオカード追加』『メモリの増設』『USBメモリでReadyboost』など遅いと感じるパソコンをいかに改善させるか、様々な対処法がありましたが最近だと『OSやアプリケーションを入れるストレージをHDDからSSDに変える』ことだと言われています。
実はHDDからSSDに変更する方法は上記のどれよりも費用対効果が高く、適切な設定と併用すればその違いを確実に体感できるレベルなのです。
それ故現在ではゲーム機でも内蔵HDDをSSDに変更した方が良いとまで言われるぐらいです。
ですがHDDと同程度2TBの容量を持つSSDは現在の平均価格では数万円~10万円を超えるなど、一般人が使うパソコンに導入するにはあまり現実的ではありません。そこで行き着くのがSSDとHDDを併用する運用形態です。
SSDにOSとアプリケーションを入れることで起動時間や読み込み速度が向上し(特にゲーム)、HDDには今まで通り多くのデータを保存できるので、パフォーマンスを向上させつつ低コストで効果が見込める現状の最適解と言えるでしょう。
そんなSSDとHDDの併用について今回は解説してみたいと思います。
SSDは『Solid State Drive(ソリッド・ステート・ドライブ)』の略語でデータを記録する媒体として『NAND型フラッシュメモリ』を採用しています。
既存のストレージであるHDDより読み書きが高速におこなえ(2~3倍以上)、SSDは物理的な駆動部分がなくHDDよりシンプルな作りなので(現在発売されている有名メーカーのSSDなら)故障率は低めです。
物理的に駆動する部分がないため衝撃などに強く、落雷のサージ(異常高電圧)などを受けない限り物理的に故障することはまずありません。
しかしHDDと比べると容量あたりの価格が高めで、現在の主流は256GB~512GB、値段は16,000~30,000円程度となっています。種類はSATA用の2.5インチサイズの物と、M.2という最新規格のスロットに装着する二つのSSDが存在します。
SSDはUSBメモリと同様『寿命(書き換え可能な上限)』がありますが、USBメモリと比べると容量が大きい分寿命も長く、内部のコントローラーチップによって長持ちするように調節されており、256GBのSSDでも毎日10GB程度書き込んでも数年~十年以上持つだのけ余裕があるので、一般人が使うのであれば気にしなくてよいレベルです。
現在SSDに採用されているフラッシュメモリは『MLC』か『TLC』と呼ばれるものがほとんどで、MLCの方が読み書き速度が速く、書き換え可能な上限回数が多いので理論上はTLCより寿命が上です。
現在のMLCとTLCの速度に関してはキャッシュを積むなど各社工夫を凝らしているので、体感できるほどの違いはありません。
同じ容量のSSDの場合MLCとTLCならTLCを採用しているSSDの方が安いのですが、ただ値段だけを見ずに購入候補のSSDがMLCなのかTLCなのかチェックし、納得した上で買ったほうがガッカリせずにすむでしょう。
どちらも空き容量が多い状態を常に保った方がその仕様上寿命が長くなるので、十分な容量を持ったSSDを購入することが長く使い続けられる秘訣でもあるでしょう。
HDDは『Hard Disk Drive(ハード・ディスク・ドライブ)』の略語でデータを記録する媒体として『プラッタ』と呼ばれる円盤状の物体が用いられ、それに磁気データで記録する方式の記憶媒体です。容量単価はSSDよりかなり安く、大量のデータを保存するのに向いています。デスクトップ内蔵用HDDとしては3.5インチのサイズで容量は2~4TB(2000~4000GB)、値段は6,000円~10,000円程度のものが現在の主流です。
HDDにデータを読み書きしている(内部の円盤を回転させている)最中にパソコンをテーブルなどから落としたりすると故障する可能性があります。動かすのに内部のモーターを回す必要があるためSSDより消費電力は高めです。製造技術は充分にこなれているのですが、SSDに比べると構造が複雑なのでそれなりに故障率は高いです。
フラッシュメモリとは異なりプラッタに書き換え回数の上限はなく、記憶素子の経年劣化もほとんどないので、プラッタ自体には理論上の寿命はないと言われています。(モーターや記録を読み取るヘッダなどが力尽きるなど物理的な故障で寿命を迎えることはあります)
最近のミドルクラス以上のデスクトップパソコンだと最初からOSドライブにSSDを搭載しているものも多く、HDDがオプションとして扱われる事も多くなりました。更にハイスペックなゲーミングパソコンだとSSDが必ず採用され、そのついでにHDDが付いてくるという併用形態になっているのが常識になりつつあります。
ちなみにSSDとHDDを組み合わせた『SSHD(ソリッド・ステート・ハイブリッド・ドライブ)』という「読み書き速度と容量を両立させた」と謳う記録媒体もあるのですが、HDD並みの容量こそあるものの値段に対しての費用対効果は見込めない中途半端な(本物のSSDと比べると早さで大きく劣る)記録媒体となっています。
SSDは主に『ランダムリード、ランダムライト』と呼ばれる小さなファイルを読み書きする速度がHDDに比べて非常に優れています。
数値は大きいほど読み書きが速く、4K~と書かれている部分がランダム(小さなファイル群の読み書き)を示しています。
Transcend SSD 256GB MLC
Crucial SSD 512GB TLC
東芝 HDD 1TB
Seagate HDD 4TB
ELECOMのLaCieブランド(中身Seagate) 外付けHDD 2TB (USB3.0接続)
SSDを導入することで、アプリケーションやゲームなどの読み込み時間などを短縮することができますが、SSDだけで大容量を確保しようとすると最低でも数万単位の予算が必要になります。
ですがコスパの良いSSDと既に搭載されているHDDを併用することで高速な読み書きというメリットを得られつつ、データを保存する容量も充分に確保することができます。
SSDにOSを、HDDにはそれ以外のデータを保存し、HDDに初期構築に必要なソフトウェアパッケージを保存しておけばリカバリー(パソコンの初期化)が必要になった際、環境の再構築が楽になります。
リカバリーを行うとOSの入っているストレージ内部に保存したデータは一部の例外を除いて全て削除されますが、OSとデータ領域を分けておけばリカバリーでSSDの中身は全て消えても、HDD内のデータと初期構築用の諸々はそのまま維持されるので、より短時間で元の環境を構築することが可能になります。
これはHDDを2台併用しても同じ事ができるのですが、SSDの寿命を延ばすため極力意識してデータをHDDに保存するクセを付けることで、必然重要なファイルがHDDの方へ集まり、万が一SSDをリカバリーする必要ができたときでも大切なファイル群を改めてHDDに移動させるという手間が省けるという事に繋がります。
SSDの寿命を延ばすために常に二分の一から三分の一程度の空き容量を確保しておくというのが理想ですが、128~200GB程度の使用量であれば、ドライブごと行う『イメージバックアップ(※1)』を取るのに丁度良いサイズにもなって、外付けHDDなども併用すれば、OSを含んだ履歴バックアップを複数保存する事も容易になります。
※1...ファイル一つ一つではなく、ドライブやパーティションを1つのファイルに見立ててバックアップする方法で、Windowsに備わっている『復元ポイント』よりも『OSの状態も含めて確実に元の状態に戻せる事』が特徴です。
SSDを単体で用いる場合、『容量単価が高いため、HDD単体よりも保存できる容量が小さくなる』という明確なデメリットがあるのですが、SSDとHDDを併用する場合にはこれと言ったデメリットは生じません。
モニターと本体の分かれたデスクトップパソコンなら、SSDを追加できる程度のスロットは空いていますし、消費電力についてもSSDはHDDよりずっと低消費電力なので上がると言ってもたかがしれています。
『SSDとHDDを併用した場合のデメリット』を強いて挙げるとすればこれです。
SSDのキビキビとした読み書き速度を体感した後だとOSやアプリケーションだけでなく編集用データの読み書きドライブもSSDにしたくなるので、『高いお金を払っても追加のSSDを購入したいという誘惑に駆られる』ということぐらいでしょう。
とくに大きい、あるいは大量のファイルからなるデータベースを利用するアプリケーションや、高解像度のポリゴンテクスチャーを利用した最新のゲームを遊ぶ場合など、SSDにそれらを入れて運用した場合快適すぎてHDDには戻れなくなります。(筆者はWindowsXPをHDDからSSDに移行させ、数回使用した時点で「あ、これはもうHDDに戻れないわ…」と思いました)
起動時に多数のプラグインを読み込む画像編集ソフトのGIMPや統合オフィスソフトのLibreOfficeなどは目に見えて起動速度が早くなり、Modを大量に適用したMinecraft、Skyrim、Fallout4などロード時間にHDDだと1分以上掛かっていたゲームがSSDなら15~30秒程度に短縮されたので筆者はゲーム用にSSDを買い足しました。
SSDとHDDを併用するとHDDの読み込みの遅さを余計に感じることとなり、(我慢できなくなって)結果追加出費することになってしまうのです。冗談や誇張で言っているのではなく、時間短縮の快適さは一度体験すると抗えないだけの魔力を秘めているのです。
これがないと併用も何も始まりません。好きなメーカーの必要な容量のSSDを買いましょう。
『Serial ATA Revision 3.0(SATA3)』または『6Gb/s転送対応』のものを使わないとSSDの速度を100%出すことができません。
現在購入できるものは大抵上記の条件を満たしていますが、WindowsXPやVistaを搭載したパソコンに入っているSATAケーブルを流用する場合、転送速度が3Gb/sまでにしか対応していない『Serial ATA Revision 2.0』のケーブルが使われている場合が多いので新たに買い足す必要があります。
マイクロタワーより小さいコンパクトタイプケースの場合、SSDやHDDの格納位置によってはケーブルの取り回しに困ることがあるので、まっすぐケーブルをさせないような場所の場合は右のようにL字型になっているケーブルを購入すると良いでしょう。
ただ、上向きになるタイプと下向きになるタイプの2種類があるので、どちらが必要なのかあらかじめケース内を確認してSSDをケース内の上下どの位置にセットすることになるか把握しておく必要があります。
『ツールフリー(工具不要)』で開け閉めできるパソコンでも、SSDを取り付ける際のネジ締めに使います。
数本セットになっているヤツの一番大きいプラスドライバー1本でだいたいOKなはずです。
大抵のデスクトップパソコンについている電源ならSATA用の電源ケーブルが余っているはずですが、BTOカスタム時にHDDなどを複数つけている場合足りなくなることもあります。
一度開けてみて電源ケーブルが足りないようであれば
4pin(大)電源→SATA電源 変換2分配ケーブル 参考価格:998円/画像をクリックするとAmazonに移動します
こういったものを使って、SATA用電源を確保しましょう。
手持ちのパソコンケース内に2.5インチ(SSD、HDD兼用)スロットがなく、購入するSSDに3.5インチブラケットが付属していない場合は2.5インチからデスクトップPCの内蔵HDDの標準サイズである3.5インチスロットに取り付けるためのブラケットが必要です。
Transcend製SSDの付属品ブラケット
AINEXのSSD/HDD変換マウンタ 2台用 HDM-13
こちらは2.5インチサイズなら最大2台まで同じスロットに装着できるタイプです。HDD2台は熱がこもり故障の原因になるので2台積むのはSSDだけにしておきましょう。
ぶっちゃけるとSSDはHDDと違って動かないので、パソコン内の空いているスペースに置いたりぶら下げたりでもそれほど問題ないんですが、しっかり固定した方が精神衛生上よく、取り付けたという達成感も得られます。
OSを新規インストールせず、現在の環境をそのまま移行させたい場合既存のHDDからSSDへデータを丸ごとコピーするためのソフトウェアが必要です。
大抵のSSDにはクローンを作るためのソフトが付属(シリアルコードだけでソフト自体は別途ダウンロードする必要があります)していますので、付属していればそちらを使用し、そのソフトが上手く動かなかったりした場合などには『MiniTool Partition Wizard Free』などのOS移行やパーティション操作の出来るソフトをダウンロードして使いましょう。
変換ケーブルタイプ
ドックタイプ
大抵のデスクトップパソコン(筐体がモニターと分かれているもの)であれば、大抵HDDのほかにSSD1個ぐらいは置くスペースがあるはずですが、省スペース型だったりキューブ型だったりすると場合によってはケース内での設置併用が難しいこともあるでしょう。
物理的にHDDとSSDを入れ替える必要がある場合はHDDスタンドやSATA-USB外付け用変換ケーブルなどを使ってOSを含む中身を移行した後、SSDはパソコンの中に、HDDはパソコンの外に設置する形で併用すると良いでしょう。
2スロットドックタイプの場合、最大2台までHDDを挿して使えますし、外付けHDDを買わなくても安い内蔵用HDDを購入して外付けHDDとして使えるので、以降のランニングコストが低くなります。変換ケーブルの方は安定感に欠けるので、筆者だったら常用目的では絶対に使いません。
静電気でマザーボードやメモリが破損してしまうのを防ぐためです。
よく「メモリなどを交換するときパソコンを開ける前に、まず全裸になります」という冗談がネタにされますが、全裸なら間違いなく静電気は発生しないでしょう。全裸はやり過ぎだとしても綿製のズボン&Tシャツなど静電気の発生しにくい衣服で作業した方が良いでしょう。
念には念を入れて洗濯機そばの地面に通じている蛇口(アースの代わり)などに触って静電気を抜けばバッチリです。
ついでにディスプレイやLANケーブルUSBケーブルなど全てのケーブルを抜きましょう。
大抵後ろ側に蓋を開けるネジがあります。
写真のケースは左右両面開けられるので4ヶ所にネジがあり、片方には開けるためのスライドスイッチがあります。動作確認の際いちいちネジを締めるのが面倒くさい場合などにスイッチ式は重宝します。
大抵はデスクトップなら3.5インチスロットが2~3つセットになったブロックが、ケースの大きさに応じて1~3つに分かれて取り出せるようになっており、その一つを取り出してブロックにSSDを固定します。
ワンタッチで接続できるものもあれば、手回しのネジが付いている物、ドライバーでネジを締めるタイプ等ケースによって異なりますので、SSDのネジ穴の位置を確認しながら好きな位置に取り付けましょう。
(上の写真はイメージです/写真のケースはワンタッチ式の取り外しスロットで、ブロックごとに外す事もできますが外さずにHDDやSSDの取り付け作業が可能です)
ついでに電源ユニットからも電源ケーブルをSSDに繋ぎましょう
ケースが小さくブロックを戻すと、隙間に手が入らずケーブルが取り付けられなくなるような場合はブロックを元の位置に戻す前にSATAケーブルと電源ケーブルをSSDにつなげましょう。
写真のように裏配線ができるタイプのケースの場合は、ブロックを戻した後にケーブルを付けた方が楽です。
一発で動作する確信がない場合はネジを完全に締めるのは止めておきましょう。また開ける可能性があるからです。
同様にコードも全てを戻さず、ディスプレイやマウス&キーボード、LANケーブルなど最小限にとどめておくと良いでしょう。コードを戻し終わったら、最後に電源コードを接続し、電源ユニットにスイッチがあるタイプならONに戻しましょう。
大抵のものはF2キーまたはDeleteキーがBIOSを起動させるためのキーです。押しっぱなしにすると稀に失敗する事もあるので、1秒に1回ぐらいのリズムでトントンと押した方がBIOS起動がうまくいきます。
BIOS画面でSSDが認識されていることを確認し、起動優先度をHDDからSSDに変更します。
OSをインストールした後だと忘れがちなので、この時点で変更しておきます。
あとはBIOSを保存して終了、今度はブートメニュー画面を出しOSインストールするためのDVDまたはUSBメモリを選択して起動します。
インストール画面でSSDを指定しインストールが終了できれば成功です。OSの再設定&アプリケーションの再インストールなどの環境復元を頑張ってください。
OSドライブのプロパティからHDDの使用領域がSSDの総容量より十分に下回っていることを確認します。
容量ギリギリだとコピーできない場合がありますので、SSDが256GBの物ならHDDの使用領域は200GB未満が望ましいです。SSD側に充分な容量があればHDD側の隠し領域にあるリカバリ用パーティションなどもコピーすることが可能です。
変換ケーブルタイプでも、ドックタイプでも、どちらもなければそのままパソコンを開けてSSDを取り付けても構いません。(パソコンを開け閉めする手順は『パターンA』を参照ください)
USBケーブルを繋いで問題なくSSDが認識されたら、HDDからSSDへクローンを作りましょう。ソフトがついてなくてもフリーソフトで代用可能です。(写真はMinitool Partition Wizard 無料版)移行メニューがある場合はそれを、なければクローンを作成するメニューを選択し、完了したらシャットダウンします。
取り付け方法は『パターンA』を参考に、お好みの場所へ取り付けてください。
2.5インチHDDに比べて薄く発熱の小さいSSDは以下の写真のように、裏配線ができるケースなら右面(マザーボードの裏)に専用取り付け場所が備えられているものもあります。
それ以外だとケース下部などに取り付ける場所があったりしますので、事前に説明書を見たりケースを開けたりして確認しておきましょう。
起動後すぐにBIOS画面を表示させ、起動優先順位を既存のHDDからSSDに変更します。
ここでBIOS画面を出すのに失敗すると今まで通りHDDから起動してしまい、場合によってはせっかくツールで書き込んだSSD側のブート情報がWindowsによって無効化されることがあります。
BIOS設定をやり直し優先順位をSSDに変更しても起動できない場合は、優先順位をHDDに戻してWindowsを起動し直し、もう一度移行用ソフトを使って移行作業をやり直してください。
起動したドライブのプロパティを参照し、ボリュームラベルや型番などがSSDのものになっているか確認しましょう。Cドライブの総容量からSSDである事が確認できたら成功です。
SSDに初期不良がない事を確認できるまで、数日の間はHDDの中身を残しておきましょう。
OSの設定、HDD内のデータは丸々SSDに移動しているので、再設定やアプリケーションなどの再インストールなどは必要ありません。
数日使って問題ないようであれば、HDD内の不要なファイルを削除してSSDとHDDの併用を思う存分堪能してください。
SSDとHDDを併用する場合の運用基本は
SSDはコストパフォーマンスの良い物を購入し、数年経ったら買い換える方針なら『空き領域云々』は厳守する必要はありません。
概ね上の2つを守ればSSDとHDDを効果的に併用することができるでしょう。
一番最後は少しでも長く使うためのおまじないみたいなものです。
それ以外の(場合によっては追加出費に繋がる)併用条件は以下で説明します。
積んであるメモリが足りなくなると仮想メモリをSSDに読みにいき、そこで足を引っ張る(HDDより早いとはいえ実メモリのアクセススピードよりは遅い)のでなるべく仮想メモリを使わないように充分なメモリ、最低でも8GB程度は積んでおくと良いでしょう。
SSDとHDDを併用するための条件というわけではありませんが、メモリ容量が十分にないとプログラム動作の遅さで足を引っ張ってしまうため、せっかくのSSD高速読み書きが生かしきれません。
SSDは書き込まれる回数が多いほど寿命が短くなると説明しましたが、頻繁に読み書きするブラウザのキャッシュや環境変数のTEMPをRAMディスクに設定すれば、SSDの延命に少しは繋がるでしょう。
ただしRAMディスクを作るとその分メモリ容量が減りますので、16GB~32GBのメモリを積むなどRAMディスクを併用しても充分な空きメモリが確保できる環境でのみ推奨です。
さらにRAMディスクの中身を保存するタイプまたはその設定をおこなった場合、RAMディスクイメージの保存場所を変更しないとRAMディスクに書き込んだ内容をイメージファイルとしてSSDに書き込むことになり、結果頻繁な書き込みが発生しSSDの寿命を縮めてしまうことに繋がってしまうので、RAMディスクドライバを他のものに変更するか設定でイメージファイルの作成先をSSDではなくHDDに変更するようにしましょう。
例えばイメージファイルの保存場所を変更できない『ROGRAMDisk』などの場合、イメージファイルの実体をHDDに置き、mklinkコマンドでシンボリックリンクを作成することで保存場所をHDDにすることが可能です。
1.『C:\Program Files (x86)\ASUS\ROG RAMDisk\RogDisk0.img』をHDD(例:D:\ImageFile)にコピーした後、コピー後のファイルを本体だと判別しやすいようにファイル名を『RogDisk0_Main.img』に変更する。
2.エクスプローラーなどで『C:\Program Files (x86)\ASUS\ROG RAMDisk\RogDisk0.img』を削除する。
3.管理者権限で起動したコマンドプロンプト(cmd.exeを管理者権限で起動する)で『C:\Program Files (x86)\ASUS\ROG RAMDisk\』に移動する。(以下の文字列はその為のコマンドです)
pushd C:\Program Files (x86)\ASUS\ROG RAMDisk
4.HDDに保存したイメージファイルへシンボリックリンクを張る。
mklink RogDisk0.img D:\ImageFile\RogDisk0_Main.img
以下説明ではRAMディスクのドライブをX:、ルートにTempというフォルダを作成していると仮定します。
Tempフォルダの場所を変更する場合、先にRAMディスク上にTempフォルダを作成しておく必要があります。
if not exist X:\Temp\nul MD X:\Temp
上記一行をテキストエディタなどにコピー&ペーストで貼り付け、MKTemp.cmdと名前を付けてスタートアップフォルダ(※2)に入れておくとTempフォルダがRAMディスク上(X:)になかった場合、自動的に作成してくれます。
※2...Windows7~10の場合『C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\Microsoft\Windows\Start Menu\Programs\Startup』
『システムのプロパティ』を開き『詳細設定』タブにある『環境変数』ボタンを押し、『ユーザー環境変数』の中から『TEMP』と『TMP』の値をRAMディスクのテンポラリフォルダ(X:\Tempなど)に指定します。システム環境変数の方は変更しない様にしましょう。内容を保存しないタイプのRAMディスクだとごく稀に一部のインストーラーが正しく動かなくなります。
コントロールパネルのJavaの設定からは変更できないので『C:\Users\ユーザ名\AppData\LocalLow\Sun\Java\Deployment』フォルダ内の『deployment.properties』という名前のファイルに
deployment.user.cachedir=X\:\\Temp
と追記します。\が多いのは間違いではなく、こう記述しないと認識しないからです。
コントロールパネルの[デバイスとプリンター]から上部メニューバーの[プリント サーバー プロパティ]から変更可能です。
例:スプールフォルダーを『X:\Temp』に変更
インターネットブラウザの各キャッシュ場所とその変更方法は、それぞれ異なるので各自Googleなどで検索して変更してください。
以上のような設定を用いてSSDとRAMディスクを併用する事で、SSDに掛かる負担を減らす事が可能です。
具体的なSSDを紹介する前に、定番メーカーとメーカーごとの傾向を筆者の独断と偏見で紹介したいと思います。
現状SSDとその記録用フラッシュメモリを開発している中でトップに位置するメーカーではないでしょうか?高性能のSSDから安価なTLCを採用したSSDまで各種取りそろえています。1~2年前はコストパフォーマンスでSSDを選ぶならSamsungで間違いなかったのですが、他のメーカーも安価なTLCを採用したSSDを販売し始めたため、現在はそれほどコストパフォーマンスが良いとは言えなくなりました。
予算が豊富であればM.2用の高速SSDも揃っていますが、現状M.2用SSDはSATA用SSDに比べ費用対効果があまりよくありません。(数値ではめちゃくちゃ高速になるのですが、SATA用SSDとの体感がほとんど変わらないそうです)
SDカード同様信頼性を第一に質の高いSSDを揃えており、安心が欲しい場合におすすめのメーカーです。
TLCのSSDでもSanDiskの名前がついているだけでなんとなく品質が高そうに思えますが、現在はSamsungの値段と大して変わりないので値段なりの性能と品質だと思われます。
米国Micronの一ブランドでメモリやSSDなどを取り扱っています。SSDが出始めた頃は初回ロットファームウェアやコントローラーに不安定な印象が強いメーカーでしたが、現在はほとんどのモデルで高評価です。
慎重な人は新製品には飛びつかず、発売してから評価の高いモデルを買うのが定番となっています。
こちらもSanDisk同様、以前はガチガチの鉄板メーカーでしたが、現在は高級路線へと変更し、PCIスロット用やM.2スロット用SSDがメインとなっています。
SanDisk同様安心が欲しい場合、より高性能のSSDを求める方におすすめです。
上記メーカーに比べるとワンランク落ちますが、安くてそれなりの品質を持ったSSDを扱っています。運悪く初期不良品にあたったら保証を使ってさっさと交換してもらいましょう。
Amazon.co.jp販売品ならちょくちょく割引クーポンが発行されますのでコスパは非常によいでしょう。
東芝チップを使っている点で立ち位置的にはCFDと似たように思えますが信頼性で言えばWDの方がはるかに上でしょう。HDDではトップ企業ですが、SSD業界では新参なので情報が少なくメーカーとしての傾向がまだ見えません。
噂を聞くかぎりでは割と性能は良いようです
SSDを作っているメーカーではなく、代理販売をおこなっているメーカーブランドです。
稀に大きな値引きをされることがあるので、TOSHIBA(東芝)製チップを採用したものならそこそこのコストパフォーマンスがあります。TOSHIBA製チップの評判はSDカードと同じく、速度より信頼性重視のようです。TOSHIBA製であることの信頼性はTranscend以上SanDisk以下ぐらいだと筆者は個人的に思っています。
まぁ筆者ならCFDよりはTranscend選びますが。
上に挙げたメーカーの中から選ぶのであれば、品質的にハズレを引くことはまずないでしょう。
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トランセンドの『TS480GSSD220S + SSD換装サポートキットセット』は『480GBのTLC型SSD』とHDDからSSDへ移行するためのキットが付いた(たぶんAmazon専売)商品です。
・3.5インチ用スロットに装着するためのブラケット
・固定用ネジ
・SATAケーブル
・ドライバー
・ 7mm→9.5mmへのアダプター
・クローン作成時に使うSATA-USB変換アダプタ
・クローン作成用ソフト(要ダウンロード)
上記で説明したSSDへの換装および併用に必要な品物がほぼ全て揃っているので、道具を一つずつ揃える手間がはぶけるので初めての方にもおすすめです。
『Transcend SSD換装サポートキット TS-CK3』も個別に販売していますが、Amazonなら各128GB~1TBまで容量毎にセット販売しているようなのでTranscendのSSDに決めたのであればセットで購入すればほんの少しだけ(100円程度)お得に購入することができます。
…が、Amazon.co.jp販売のTranscend製SSDはちょくちょく割引クーポン(5%)が発行されるので、容量の大きいSSDの場合なら個別に買った方がお得なこともあるのでクーポンチェックは忘れずに!
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とりあえずOSドライブだけ換装し、SSDの効果を体験したいのであればこちらでしょう。
SanDiskといえばSSDでも鉄板メーカーでSLCやMLCのものが多かった頃は他社製品より高かったのですが、現在2018年ではTLCだとサムスンより安いのが意外でした。
OSをSSDに新規インストールして元々のHDDと併用する場合は問題ありませんが、既存のHDDからクローンを作るには容量不足になる恐れがあります。現在の起動用HDDの使用容量が200GBを越えているのであれば480GBモデルの物を購入した方がよいでしょう。
参考価格:42,900円/画像をクリックするとAmazonに移動します
どうしてもHDDからクローンを作る必要があるけれど、1TB以上使用していて普通のSSDでは容量が足りない…という場合の為にこういった大容量のSSDも存在します。使用しているチップはMicron製でCrucial製SSD(Crucial MX300 SSDなど)で搭載されているものと同じです。
Micronの公式を見る限り『MTFDDAK2T0TBN-1AR1ZAB』のバルク品のようで、他社の高価なSSDに比べると大容量(20~30GB)のファイルをコピーしたときなどに速度が低下するなどの差はありますが、それを差し引いても2TBの大容量で通常価格49,800円、1GBあたりおよそ25円、現在のSSDの中では最高のコストパフォーマンスを発揮していると言っていいでしょう。
現在NTT-Xなどでは43,000円程度で、場合によってはクーポン適用で4万円を切る価格で販売しており、タイミングが合えば限定販売されていた頃に近い価格で購入する事ができます。
「アプリケーションを大量にインストールしてあり、OSのクリーンインストールで環境の再構築なんてとてもじゃないけれど手間が掛かりすぎて無理!」などの事情があり、面倒な作業を回避するためには金に糸目をつけないという方であれば、2TBのHDDからもクローンが作れるこのSSDがおすすめです。
もちろん普通の大容量SSDとしても…例えば『Steamのセール時についついゲームを買いすぎてしまう人』にもおすすめできます。
仕様引用:Micron公式
SSDも出始めの頃はメーカーによって当たり外れが大きく、プチフリ(数秒から10数秒フリーズしたかのように応答がなくなる現象)が起こったり、記憶媒体にフラッシュメモリを採用したことでの寿命の長短について色々な論議がなされましたが、現在読み書きを行うコントローラーの進化と成熟でプチフリが発生することはほぼなくなり、寿命についても技術が進歩しMLCはおろか一般使用であればTLCでも問題ないという結論になりました。
すでに一部の人のみ使う高価なストレージという認識は薄れ、ノートパソコンに搭載されることも多くなり、海外の一部メディアでは2018年にはより高速なPCIeタイプSSDも含め、パソコンにおけるSSDの搭載率が50%に達するであろうという見解も出ています。
また次世代のQLC型SSDも開発されつつあり、寿命を延ばしより安価なSSDを目指すのか、それとも寿命を短くする代わりに容量を大きくし光学メディアの後継ストレージとなるのか注目されるところです。
こんな感じでSSD業界では1~2年前の知識があてにならないことも多いので、SSDの値段に対しても常にアンテナを張る必要があるでしょう。筆者もこの記事を書くために調べ直さなければ、いまだにSamsungのTLC型SSDが一番コスパが良いと思っていて、2TBのSSDが4万円以下で売られている事実を知らなかったのですから。
参考元:TRENDFORCE/SSDの普及率と開発中の3D-TLC、3D-QLCについての記事
この記事を書くに当たって一番悩んだのが『SSDとHDDを併用したときのデメリット』でした。SSD単体運用やSSHDなどなら明確なデメリットがあるのですが、SSDとHDDを併用する事でそれぞれのデメリットを解消してしまうので『HDDの遅さが際立つのでSSDを買い足したい誘惑に駆られる』位しか思いつきませんでした。
あきらめて買ってしまえば楽になれるのですけれどね。
以下はSSDが早すぎる事での弊害になりますが、WindowsXPの頃はSSDだと起動が早すぎてスタートアップに登録されている常駐アプリケーションのタスクトレイアイコン登録が追いつかなかったなどという事が起こったりしました。Windows8以降は必須サービスプログラムも遅延起動されるので7以前に比べればそういった問題も出にくくなっています。
万が一起動が早すぎて追いつかない(エラーなどが出る)事象に遭遇したらWindows遅延起動スタートアップToolなどを使ってエラーの出るプログラムをわざと遅く起動させれば大抵は大丈夫です。
2万円未満のSSDを買い足すだけでゲームのロード時間やプラグインを多数読み込むアプリケーションなどの起動&ロード時間が驚くほど早くなるなんて、ホント良い時代になったものです。
またこちらの記事ではSSDの寿命について解説しています。気になる方はぜひ読んでみてください。
[article: 1726]