ご飯を炊くには、炊飯器を使うと時間にして通常50分強かかります。もう少し時短ができないかと思う方は多いでしょう。
**時短のために、圧力釜を使うという方もおられるようですが、ここでは、炊飯器の早炊き機能を使う方法を考えてみましょう。炊飯器で早炊き機能を用いた場合、通常の炊き方とどのような違いがあるかを検討します。**
炊けるまでの時間の差はどれくらいでしょうか?早炊きモードにして、時間の差の分、電気代にどのくらい影響するでしょうか?炊けたご飯に違いがあるでしょうか?早炊きすると味が落ちると心配しますが、早炊きしてもおいしく炊ける方法はあるでしょうか?早炊きの得意な炊飯器があるのでしょうか?そのような疑問に答えてみましょう。
炊飯器の操作部の表示を見ますと例えば象印の5.5合炊きの炊飯器では、白米、白米熟成、白米急速、エコ炊飯の表示が見られます。
この表示で、白米は標準のモードを意味します。白米熟成はじっくりと時間をかけて炊くモードで、米の旨味を出すという意図で設計されています。
標準モードよりも10分くらい時間がかかります。エコ炊飯は電力をエコにするモードで、電力を落として、時間は標準よりも5分くらい長めにして炊きます。
白米急速がいわゆる早炊きモードです。設計では標準モードよりも20分くらい時短にしています。炊き方を工夫することで、早炊きにするわけです。
※ 機種によって早炊きや他の炊き方についての表示は異なりますので詳しくはお持ちの炊飯器の公式サイトを参照してください。
*炊飯器は、ヒーターの加熱カーブを前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らしの4段階にして炊飯プロセスを形成させています。
*前炊きは余熱ともいわれ、水から50℃くらいに温度を上げます。この工程で米に吸水させる役割をさせます。炊き上げは強火加熱の工程です。
沸騰維持では中火にして沸騰を維持させます。蒸らしでは、沸騰維持の温度から下げて、ご飯表面の余分な水分を飛ばします。鍋で炊くときのふたをとらずにおく工程です。時間的には、前炊き15分、炊き上げと沸騰維持に20分、蒸らしに15分、合計55分を標準モードにしています。
早炊きモードでは、前炊きと蒸らしの工程で時短を行うというやり方をします。
参照文献: 電気炊飯器の最近の動向について 平田由美子
※ 参考文献が古いため参考程度にしていただけたらと思います。
炊飯器で早炊きで炊いたご飯と通常のいわゆる標準モードで炊いたご飯の違いがあるでしょうか?
*早炊きの方法は、炊飯プロセスの加熱カーブの温度を変えず、前炊きと蒸らしの時間だけを短縮するやり方をしていますので、前炊きの工程における米に水を吸わせる度合いが不足気味であることと、蒸らし時間を少なくすることになり、標準モードで炊いたものよりもかためになる方向です。
*象印の取扱説明書にも白米急速モード(早炊き)では少しかために炊き上がりますと記述されています。
通常、米は研いだ後15分くらい水に浸して、その後ざるにあけて水を切り、さらに15分くらい放置してから、炊き始めるというのが、おいしく炊けるコツと言われます。
炊飯器の標準モードでは、米を研いだ後、すぐにでも炊飯器に入れて炊き始めても、ご飯の質にそれほど変化がないように、第1段階の前炊きに時間をとっているわけですが、早炊きでは、その時間を削ることにしていますので、やはり差が生ずるわけです。これを防ぐには、早炊きの前に、米を研いだ後、水に浸漬させておく時間をとればよいことになりますが、それをすると結果的には時短にならず、早炊きの意味がなさなくなります。早炊き機能を用いたとき少しかためになることを避けるには少し水を多めにするという手が考えられます。
早炊きの時間はどれくらいでしょうか?
標準モードでは、前炊き15分、炊き上げと沸騰維持に20分、蒸らしに15分、合計55分にしていました。早炊きモードでは、前炊きと蒸らしの工程時間を減らして、前炊き5分、炊き上げと沸騰維持に20分、蒸らしに5分、合計30分にできます。標準モードよりも25分時短になり、半分近くの時間に短縮できることが分かります。
※ 機種によって異なるため詳細が気になる方はお持ちの炊飯器の公式サイトや説明書などで早炊きについてご確認ください
早炊きは、前炊きすなわち50℃における時間を短くして沸騰させるまでの温度に早く到達させますので、ヒーターの常温から沸騰時までの温度勾配をきつくする必要があり、そのために標準モードよりもかえって多くの電力を要することになります。
早炊きは蒸らしの時間の時短があり、この分は電力の節約になりますが、蒸らしの温度は沸騰温度以下ですので蒸らし工程における標準モードとの電力量の差は小さいとみてよいです。
総じて、早炊きモードでの電気代は、標準モードより割高になります。
電気代から見たときは、エコモードが最も節約になります。時短にはならず、標準モードより少し多めの時間がかかりますが、消費電力が少ない分、電気代は多くかかりません。
早炊き機能は多くの炊飯器についていますが、そのなかでも、特に早炊きの、いわゆる最速の早炊き機能を有する炊飯器を紹介します。
タイガー魔法瓶は、時短早炊き炊飯器、IH炊飯ジャー 炊きたて JPE-A100、JPE-B100を2017年9月10日から発売しています。白米1合を15分炊飯の設定ができる、少量早炊きコースが新たに搭載されています。
参照元:[タイガー魔法瓶株式会社ニュース2017.8.29](https://www.tiger.jp/campaign-news/new_product_2.html)
株式会社神明では10分ごはんシリーズを発売しています。小型炊飯器で、炊飯量は、白米1.5合まで、玄米1合まで、ですが、これが最速です。
参照元:[10分ゴハンシリーズ](https://www.akafuji.co.jp/product/10min/)
早炊きモードではご飯が少しかためになると述べましたが、ふわふわご飯を意図している炊飯器を紹介します。5.5合炊きにしましたが、同じシリーズで、3合炊き製品も出ています。
圧力炊飯器の良さである、もちもち感のあるご飯が期待できます。白米急速の表示が早炊きモードです。
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日立の圧力をかけながらスチームで蒸らすという手法を使った炊飯器で、ふっくらしたご飯が特徴です。快速の表示が早炊きモードです。
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この記事では炊飯器の早炊きについて全てを網羅できた訳ではありません。
特に、炊き上がり時間が10分という最速の早炊き炊飯器のご飯の質については知見がなく、メーカーのホームページ以上のコメントができませんでした。
早炊きに関して、水でなくお湯から始めたらどうかというアイデアが聞かれます。お湯を使用しても炊飯器の炊飯モードにおける温度勾配を変えることには至らないということを考えれば、効果がほとんどないことが分かります。
そのほかなにか疑問点を感じるようでしたら、お問い合わせフォームからお問い合わせください。皆様からのご質問やご意見をもとに、記事を随時、加筆・修正して、充実させてまいります。
早炊き機能はよく設計された機能で、便利です。上手に使いこなすことで、忙しい方の時短に効果を発揮してくれます。
しかし、早炊きモードは炊飯時間を短くするためどうしてもご飯の質に影響を与えます。特にかためになる傾向です。かたさについては水加減を自分の好みに応じて調整することで改善されます。
早炊きモードは時短になるので電気代が安くなるであろうと期待されますが、設計上、標準モードよりも電力が多く消費されるようになっています。デメリットというほどではありませんが、標準モードが、電気代からもご飯の質からも最適な設計になっていることが認識されます。
一度のご飯の量が少量ですむ方は、少量の早炊き専門の炊飯器を検討されるのがよいでしょう。