独立した子供からエアコンを購入したいが、床置きエアコンのメリットはあるだろうかと相談を受けたことがありました。当家では床置きエアコンは暖房にのみですが、床置きタイプを使っていたので、子供にその頭があったのでしょう。暖房の威力は十分承知していましたが、床置きエアコンの冷房効果を考えてみました。今回、その際の知見が役に立つかと思い、記事にしてみました。
Written By 花透 PEACE43
家庭用エアコンで圧倒的に多いのは壁掛けエアコンで、コンプレッサーを室外に置き、エアコン本体を壁にかける、セパレート型と呼ばれるタイプです。
エアコンには、壁掛けと窓用の他のタイプとして、床置き、天井吊りなどがあります。いずれもセパレート型になります。床置き、天井吊りエアコンは需要は少ないですが、壁掛けを嫌う方に適するタイプです。
その中でもここでは、床置きエアコンについて、特徴、メリット、デメリット、電気代、設置方法、室外機は必要なのかなどを解説します。
さらに、床置きエアコンのメーカーと商品をいくつか紹介いたします。エアコン、特に床置きエアコン選びの指針にしていただければ幸いです。
また他のタイプのエアコンとして窓用エアコンの記事も執筆しているので、床置きエアコン以外のエアコンについても知りたい方はこちらも参考にして見てくださいね。
ちなみに窓用エアコンは室外機を必要としないため、室外機が置けない方にとってはとても便利です
※ 床置きエアコンは室外機を必要とします。床置きエアコンの室外機については後ほどこの記事で解説します。
床置きエアコンの構成は壁掛けエアコンと同様で、室外機(圧縮機、コンプレッサー)が室外にあり、凝縮器および蒸発器が室内にあるセパレート型です。
壁掛けエアコンが室内の部分を壁に掛けるのに対して、床置きエアコンは、床に台を置いて、その上に本体を乗せるかあるいは壁に張り付けた形に置きます。
設置には室内の部分と室外機との配管工事が必要で、配管を床に穴を開けて室外機とつなぎます。壁に穴を開けて室外機への配管をする場合もあります。
壁掛けエアコンの風は、冷風、暖風とも上から来ます。床置きエアコンでは、冷風、暖風とも下から、あるいは人の高さから当たる形になります。したがって、床に風が当たるのが早く、暖風では足元から暖かくなり、冷風も体に当たりやすいのが特徴です。
特に天井の高い部屋、吹き抜けのある部屋では、壁掛けエアコンに比べて、人の住む高さへの空気の伝わり方に大きな差が出ます。暖風、冷風とも体感温度を早く察知できます。
壁掛けエアコンのように壁からの出っ張りが少なく本体の厚さが薄いため、かさばった感じがせず見た目には小型の家具を置いている印象を与えます。
エアコンの存在を気にすることなく、部屋全体の空間デザインを美しく設計することができます。
※ もちろん使用する機種によります
撮影 : PEACE43
*床置きエアコンは室外機なしでも使えるでしょうか?という問いの答えは、ノーです。
*先に述べましたように、コンプレッサーを室外機としてセパレート型にしています。
壁掛けエアコンのように室内に管を巡らせる印象がないので、室外機がなくて一体型であると思われる方がいるのかもしれません。
しかし配管は壁を這わせることなく、室内機から床または壁を通じて室外機につなげます。
床置き型の冷房機には、冷風機と呼ばれる小型の冷風を送る機器があります。ただし、この機器は風が当たる場所は冷えますが、反対側には熱い風が吹きます。
冒頭でも紹介しましたが、室外機が置けない場合は窓用エアコンを検討して見ましょう。
さてそれでは床置きエアコンのメリットを挙げてみましょう。確かに室外機は必要なのでよく使われる壁掛けのエアコンと同じではないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は結構色々とメリットデメリットがあります。
暖房では、壁掛けエアコンに比べて低い位置から暖風が来るので、圧倒的に効率がよいです。
効果的に温度を調節できるので大事なメリットです。
階段下の空間やキャビネットの空間などを利用して設置でき、空間の無駄をなくすことができます。
これは狭い部屋の方や部屋のインテリアにこだわりたい方にとってはかなり大きなメリットになるのではないでしょうか。
壁掛けエアコンは高いところにあるので、フィルターの掃除などの手入れが面倒ですが、床置きエアコンでは、低い位置にあるので、作業がやりやすくなります。
壁掛けエアコンでは、脚立を使ってエアコンを持ち上げて設置するという労力が必要です。
しかし、床置きエアコンは、床の上に直接施工をするので労力が半減します。ただし、配管の工事は各家庭で事情が異なりますので、工事所要時間や工事費について壁掛けエアコンより安くなるとは一概に言えません。
もちろん床置きエアコンにはメリットばかりでなく、デメリットもあります。
壁掛けエアコンでは、壁の高い位置に設置するので場所をとりませんが、床置きエアコンでは、設置の位置と、形が薄型とはいえある程度の厚みがありますので、設置のためのスペースが必要になってきます。
床置きエアコンのすぐ前は、直接風が当たるので、物を置けず、ある程度のスペースを開けておく必要があります。
人の高さから風が来るので、床置きエアコンの近くにいると、直接風を受けやすく、暖風、冷風とも効き目が出すぎるきらいがあります。
直風が嫌いな人によっては、デメリットになり得ますねがあります。
ファンのスイング機能がないので、床置きエアコンの周りへの効果が大きく、全体として温度むらが生じます。
冷風が低い位置から出て、低い位置にたまるので、部屋全体、特に人の体の上方に行きにくい傾向にあり、冷房効率としては壁掛けエアコンに劣ります。
壁掛けエアコンに比べて、需要が少ないせいでしょうか、製造するメーカーが少なく、機種も多くありません。商品の選択の幅が狭いことになります。
撮影 : PEACE43
※ 細かい数字はいいから一ヶ月の電気代が知りたい!という方は後ほど解説しますが1年で約1年間の29,000~30000円と考えておきましょう。
床置きエアコンの性能は、例えば、パナソニックの10畳用の床置きエアコンCS401CY2では、冷房能力2.8kW、消費電力680Wとなっています。暖房時は、能力4.0kW、消費電力1050W で、期間消費電力量は999kWhです。
参照元:パナソニック
これをパナソニックの10畳用の壁掛けエアコンと比べると、パナソニックの10畳用の壁掛けエアコンCS-281CY2では、冷房能力2.8kW、消費電力770Wで、暖房時は、能力3.6kW、消費電力870W で、期間消費電力量は967kWhになっています。
参照元: パナソニック
これらのデータから、10畳用の床置きエアコンCS401CY2の方がパナソニックの10畳用の壁掛けエアコンCS-281CY2よりも効率が少しよくないことが分かります。
期間消費電力量から、東京電力の料金計算サービスを利用して、電気料金を計算すると、
パナソニックの10畳用の床置きエアコンCS401CY2では、1年間の電気代は、29,165円となります。期間消費電力量ですので、1年のうち10ヶ月くらいの稼働ですが、単純に1ヶ月の平均にすると2430円、1日当たりでは81円になります。
パナソニックの10畳用の壁掛けエアコンCS-281CY2では、1年間の電気代は、28,201円となります。
このことから床置きエアコンの方が壁掛けエアコンより電気代が少々かかることが分かります。
東京電力の電気料金の計算には以下のサイトを利用しました。
参照元:東京電力電気料金計算サービス
https://www.kakeibo.tepco.co.jp/ratesim/jdb/result001
なお、期間消費電力量については下記のサイトを参照してください。
参照元:一般社団法人日本冷凍空調工業会
https://www.jraia.or.jp/product/home_aircon/e_saving_energy.html
床置きエアコンの設置は、工事業者に依頼することになります。素人が行うのは難しいでしょう。
設置方法を順に追ってみましょう。
室内機と室外機をつなぐ配管用の穴を明けます。
室内機の前パネルを外して配管の準備をします。
室内機に接続配管を設置します。
ドレン配管を行います。
室内機・室外機の接続電線を接続します。電源線を室内機または室外機のどちらか一方から接続します。
室内機を床に置くかまたは壁に固定します。
室内機・室外機の配管を接続します。
リモコンの設定をします。
接続配管の設置、ドレン配管、接続電線の接続、アース工事を行います。
リークテストを行った上、エアコンの起動試験を行います。
床置きエアコンの設置費用は、例えば、下記の取り付け会社では、3万円になっています。壁掛けエアコンの約2倍弱の価格のようです。
参照元:株式会社タウンサービス
設置工事にかかる時間は、壁掛けエアコンと同じくらいと考えてよいでしょう。3時間くらいは必要です。
床置きエアコンのメーカーは多くありませんが、以下に挙げられます。各メーカーの特徴を記します。
特徴として、無給水加湿と呼んで、空気中の水分を取り込んで部屋の加湿をし、うるおいをもたせることと、
と、コンパクトでスリムな形状であることが挙げられます。
ラインナップでは、8、10、11、14,15、18畳用の機種があります。
参照元:ダイキンのホームページ
参照元:価格.com
上下の吹き出し口による風の送りを強調しています。
10、14畳の2機種が用意されています。
参照元:パナソニックのホームページ
価格は、17万~21万円の幅です。
参照元:価格.com
省エネ設計、インテリア性重視、入れ替え容易をカタログに謳っています。
ラインナップでは、10、12、14、16、18畳用が取りそろっています。
参照元:三菱電機ホームページ
価格は、仕様により10万~56万円になっています。
参照元:価格.com
室外機1台で、最大4部屋まで室内機設置可能のシステムを販売しています。また、特に暖房に優れて寒冷地にPRしています。
ラインナップは、12、14、16畳用があります。
参照元:日立アプライアンス株式会社
価格は、仕様により95000円~24万円の幅です。
参照元:価格.com
各メーカーの代表商品を紹介しましょう。
この記事では床置きエアコンについて全てを網羅できた訳ではありません。
特に各メーカーの製品の特徴や価格の比較が舌足らずのきらいがあったかもしれません。
各メーカーの製品については、各々のホームページを参照していただければ、さらなる情報が得られます。
カタログ情報のみでは不満と思われる方は、実際に工務店に自分の所望の仕様を伝えて見積り依頼をしてみるとよいです。
見積り依頼は無料のところがほとんどですので、上手に利用してみるのも詳細情報を得るための一つの手であるといえます。
床置きエアコンについて疑問点を感じるようでしたら、お問い合わせフォームでお問い合わせください。
皆様からのご質問やご意見を反映させて、随時、加筆や修正をしてまいります。
冷暖房という機能だけから考えると、壁掛けエアコンで十分であるといえるかもしれません。
住空間全体を特にデザイン面から眺めてみると、床置きエアコンの存在が大きくクローズアップされてきます。
選択肢を多く持つことによって、限られた空間の利用の仕方が変わってきます。
床置きエアコンは、家庭用では需要がまだ多くありませんが、これから多様な住宅が出て来る、あるいは自分で設計してくるという中で、興味がわく機器に入るかと思われます。
もう一方では、日立の床置きエアコンのように、暖房効果が強く発揮されますので、寒さに弱い方や暖風の立ち上がりの早さを要求される向きには大きな武器になりますので、検討に値します。