自作PCを作成した経験があり、また現在バックアップ電池が関わる電子機器の設計に関わっています。この技術者という観点からパソコンのコンセントを抜くメリットデメリットについて解説しようと思います。
Written By えどう タロー
省エネのために「待機電力を少なくしたい」と考え、パソコンのコンセントを抜きたくなることも有るかと思います。
私は、自作パソコンを組み立てたこともあるのですが、ある観点から、パソコンのコンセントは抜かないようにしています。
今回は、パソコンのコンセントを抜くメリットと抜くデメリットを紹介します。
パソコンのコンセントを抜くか、抜かないかの判断の参考になれば幸いです。
早速ですが、パソコンのコンセントを抜くメリットについてご紹介します。
コンセントを挿している間、パソコンの電源をONにしていなくても、パソコンの電源回路や制御回路への電源供給はされています。
このため、俗に言う「待機電力」というものが発生しています。
大まかな計算として、デスクトップパスコンでは概ね3W程度の待機電力が発生しています。
1ヶ月間パソコンを使用することなく、放置して置いた場合の電気代は
3(Wh) × 24(時間) × 30(日) ÷ 1000 × 30(円) = 64.8円
と、おおよそ65円の電気代が発生します。年間に閑散にすると、780円になります。
「少しでも電気代を安くしたい」と考えるのであれば、コンセントを抜いて置いた方が良いでしょう。
雷が家の近くの電線などに落ちると、落雷によって発生したノイズが家の電源に流れることがあります。これを、「雷サージ」と呼びます。
雷サージに対応したOAタップなどを使用していると、ある程度防ぐことができるのですが、家のコンセントにそのままパソコンのコンセントを挿している場合、雷サージによってパソコンの電源回路が故障してしまうことがあります。
コンセントを抜いている場合、コンセントからのノイズによる影響を受けることがありませんので、雷サージによるパソコン故障を防止することができます。
ここまで、パソコンのコンセントを抜くメリットについて紹介してきましたが、続いて、パソコンのコンセントを抜くデメリットは何なのでしょうか?
多くの電子機器には、”バックアップ電池”と呼ばれる電池が入っています。この電池は、各種設定内容や時刻などを記憶しておくための最低限の電源供給のために使用されています。
パソコンの場合、BIOSと呼ばれるパソコンを動作させるための基本的なプログラムの設定内容(日時設定など)を記憶するために使用されています。
パソコンのコンセントが抜かれていない場合、これらの記憶を保持するための電源は電源回路から供給されるため、バックアップ電池は消費されません。
しかし、パソコンのコンセントを抜いてしまうと、電源回路から電源が供給されないため、バックアップ電池から電源が供給されます。
バックアップ電池の容量が十分であればいいのですが、このバックアップ電池、多くの場合はCR20??というボタン型電池が使用されており、それほど容量がありません。このため、長時間パソコンのコンセントを抜いておくと、バックアップ電池が切れてしまう、という現象が発生します。
バックアップ電池が切れてしまうと、今まで電池からの電源供給で保持していた設定内容が全て消去されてしまいます。
このため、最悪、設定が全て消えてしまい、現在は2018年なのに、パソコンの時刻設定が1980年になるなどの事態になってしまいます。
また、パソコンの電源を入れた際に「BIOSの設定が消えてしまったよー!」というエラー画面が出てしまいます。この画面は通常見ることが無いため、パソコンに詳しくない人が見ると、「パソコンが故障してしまった!」と感じるかもしれません。
(実際は表示の下に「このキーを押すと起動するよ」という案内が英語で書いてあります。この記事の下部でも対応方法を紹介しています)
冬場、金属に触れると「バチッ」となる静電気ですが、人間が帯電し、帯電していない金属に触れることによって、その金属側に電気が流れてしまっています。これを電気の専門用語ではESD(Electro Static Discharge)と言います。
身体に溜まった静電気が電子機器に流れることで電子機器が故障することがあります。
パソコンなどの場合、静電気が溜まった人が放電する先は、パソコンのボディ部分です。
コンセントを挿している場合、静電気によって発生した静電気ノイズはパソコンのボディから電源部分のアース線を介して、パソコンの外に逃がされます。
一方、コンセントを抜いている場合、静電気ノイズの逃げ場がありません。このため、静電気ノイズがパソコンの内部回路まで侵入してしまい、パソコンの故障を引き起こすことがあります。
上で紹介したとおり、静電気によって発生するノイズは、パソコンの電源回路にあるアース線を通って逃げていきます。
このため、アース線が接続されていない場合、コンセントを抜いている場合と同様に故障する可能性があるので注意して下さい。
ここまで、パソコンのコンセントを抜くメリットとデメリットをご紹介しました。
と、考え方は人によって様々だと思います。
例えば、”バックアップ電池の交換や、BIOSの設定のやり直しなんてできるよ!”という方は、電気代を少なくするために、パソコンのコンセントを抜いておくのも良いでしょう。
実際、バックアップ電池はパソコンのケースを開くと簡単に見つけることができます。
こちらの画像はパソコンの内部の基板ですが、中央上部にコイン型電池があることが分かりますよね?これがバックアップ電池です。
左側のツメで固定されているだけなので、簡単に交換することができます。
(業者などに依頼すると、これだけでも1万円程度の修理費用になります)
故障したときに面倒になるくらいなら、挿しっぱなしがいい!と考えるのも一つの手だと思います。なお、コンセントを抜くことによるメリット②については、雷サージ対応のOAタップを使用すると、コンセントを挿したままでも対策することができますよ。
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パソコンのコンセントを抜いたままにしておいて、実際に使うときに起動しない場合はどうしたらいいの?という疑問にお答えします。
白黒の画面で変な文字がいっぱい表示されていてよく分からない!
という場合、バックアップ電池が切れてしまって、設定内容が消えてしまった可能性があります。
とにかくパソコンを起動したい!のであれば、表示の最下部で
Press <F1> to resume, <F2> to Setup
と書いてあったりしますので、resume側のキーを押して下さい。
(上の表記ならF1キーを押せば良いです)
パソコンのに日付設定などが初期化されてしまっていると思いますので、日付設定をWindows上で直して下さい。
パソコンが立ち上がった後は、コンセントを抜かずにしておくと、次回パソコンを利用するときに同じエラーが発生せずに使い続けることが可能です。
今後もコンセントを抜いて使用したい、という場合は、バックアップ電池の交換をお勧めします。
電源回路や内部の制御回路が故障してしまってパソコンが起動していないことが考えられます。
(デスクトップPCの場合、電源ケーブルの根本付近に主電源があることもあるので、そこをチェックして下さい。)
この場合、修理が必要ですので、パソコンメーカーなどに相談をおすすめします。
この記事ではパソコンのコンセントを抜くことによるメリットとデメリットをご紹介しました。今回の観点以外で「こういう問題に対してはどうなの?」という疑問がわきましたら、お問い合わせフォームから問い合わせて下さい。
随時、記事の編集を行いたいと思います。
この記事では、パソコンのコンセントを抜くことによるメリット、デメリットについて紹介し、コンセントを抜いていたら起動しなくなってしまった場合の対処法についてもご紹介しました。
記事の内容をまとめます。
この記事が皆さんのお役に立てば幸いです。