今回調べていて、洗濯機の製品に起因する事故の多さに驚きました。 人間は完璧ではないし、道具も万能ではないということを改めて再確認できたように思えます。 消費者として受け身になりすぎないように、心掛けたいものです。
Written By 八色 さかえ
洗濯機は身近な生活の道具で、使い方も簡単です。
それだけに、その危険性を実感しにくいという一面もあります。
しかし、ちょっとした不注意や誤使用で、事故は起きてしまいます。
身近である故に、決して他人事ではありません。
特に子どもは大人が思ってもみないような行動をするため、その危険度が高くなりがちです。
最近ではドラム式洗濯機に子どもが閉じ込められて窒息死する事故が起こっており、その安全性が疑問視されています。
今回は洗濯機でどんな事故がどのくらい起きているのか、また事故を防ぐ方法などについて紹介します。
NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)が2013年に公表した説明資料には、洗濯機で多発している事故として以下のようなものが記載されています。
半数以上が発火を伴う事故です。
なお、脱水時の事故については、当時はすべての洗濯機にふたのロック機能が搭載されていなかったために、多発しました。
事故の多発を受けて、現在ではどんな洗濯機でもふたのロック機能を搭載するように規定が追加されています。
これ以外にも、ドラム式洗濯機に子どもが閉じ込められて窒息死する事故が2件起きています。
1件目は2015年6月に東京都で、2件目は2018年1月に大阪府で発生しました。
1件目の事故では、ドラム式洗濯機のドアを内側から開けることができず、閉じ込められてしまったとされています。
脱水時の事故同様、こちらもその後内側からドアを開けられるように規定が追加されました。
しかし、2018年に再び同じ事故が起きており、依然として危険なことが認識されています。
このため、子どもがいる家庭ではドラム式洗濯機を敬遠する向きが強いようです。
前項でも参照したNITEの説明資料によれば、洗濯機の事故は2008年から2012年の5年間に266件ありました。
年によってバラつきはあるものの、大体毎年50~45件ぐらい起きています。
被害の内訳は重傷事故12件、軽傷事故16件、洗濯機以外にも被害が出た事故103件、洗濯機の破損135件となっています。
事故の原因で最も多いのは、洗濯機の不具合によるものです。
半数以上が設計や製造、表示などに問題があり、事故に発展しています。
この資料が公表された2013年は、部品に異物が混入したり、設計上の欠陥で部品が破損する事故が多くありました。
次に多いのは、誤使用や不注意による事故です。
前項でも紹介した乾燥時に衣類に残留した油分から発火した事故や、脱水時の事故はこちらに含まれます。
このほか、件数としては多くありませんが、経年劣化による事故も起こっています。
おおむね20年以上使っている洗濯機で、その傾向が顕著です。
ここまで紹介した内容は、重大事故ではないものも含まれているので、件数が多くなっています。
重大事故だけに限定すると、毎年20件程度の事故が起きています。
つまり、報告されている事故全体の半数ぐらいが重大事故です。
重大事故の原因としては、ショートによる発火が大半を占めています。
なお、こちらの一覧には前項で紹介した、ドラム式洗濯機の子どもの閉じ込め事故がカウントされていません。
おそらく、これは使用者の不注意や目的外の使用とみなされて、報告対象外になったのだと思われます。
消費者庁で公表されている資料を見ると、報告対象となる基準の例が示されています。
つまり、他にも報告されていない事故があり、紹介したものはごく一部に過ぎません。
対象 破損した製品が、意図せずに口の中に入った場合は報告の対象となります。
また、おもちゃの笛のように通常、口にくわえて使うような玩具などの製品による事故の場合も報告の対象となります。
非対象 製品を使用する際に口にしないものであり、誤って飲み込んだものであることが明確である場合には報告の対象外となります。
参考元:消費生活用製品安全法に基づく製品事故情報報告・公表制度の解説~ 事業者用ハンドブック 2018 ~(22ページ)
まず何と言っても、洗濯機に近づけないことが一番です。
しかし、近づかないように言っても聞いてくれれば良いですが、そこまで素直な子どもはあまりいないと思います。
子どもに限らず人間は禁止されると、余計にやりたくなる気持ちが強くなるものです。
ですから、洗濯機がある部屋にカギを付けて、物理的に遠ざけてしまう人もいます。
ですが、洗濯機が風呂場や洗面台の隣に設置してあるなどといった理由で、近づかないことが不可能なこともあるかもしれません。
洗濯機のメーカー各社は、チャイルドロック機能の活用を呼び掛けています。
この機能を使えば、電源が切れている時でもドアが開かなくなります。
チャイルドロック機能がない古い洗濯機の場合は、引き出しやドアのいたずら防止用ロックを取り付けるのが良いでしょう。
100円ショップでも売っているので、導入は簡単です。
しかし、その一方でドラム式洗濯機のドアはニオイやカビの防止のため、使わない時は開けておくことが推奨されています。
ですので、なるべくなら開けておきたいものです。
その場合は、ドアにゴムバンドや挟むタイプのドアストッパーを付けて、ドアが完全に閉まらないようにすると良いでしょう。
ただ、子どもがそれらを外さない保証はありません。
ドア全体をネットなどで包み、外されないように小さなワイヤーロックなどで止めてしまうのも良いかもしれません。
しかし最も確実なのは、子どもがいる場合はドラム式洗濯機を使わないという選択です。
その他、洗濯機のタイプに関係なく、近くに踏み台になるものを置かないことも大切です。
子どもが洗濯槽の中に入るのに、使ってしまう危険があります。
火災はドラム式、縦型問わず、最も多く報告されている事故です。
それだけに注意したい点が多くあります。
ドラム式洗濯機のドアは、縦型洗濯機よりも低い位置にあります。
このため、子どもが中に入りやすいです。
子どもが閉じ込められて窒息死した事故を受け、2015年以降に製造された洗濯機については、内側からもドアが開けられるように改善されています。
しかし、それでも洗濯槽の中に入ると、感電する恐れがあります。
ドラム式洗濯機には乾燥機能が搭載されているため、洗濯槽が熱くなっている時に入ると、火傷する恐れもあります。
海外では兄弟の一人が洗濯機の中に入り、もう一人が操作ボタンを押して、洗濯機が回り出したために死亡した事故も起きています。
改善されても依然として、危険であることには変わりありません。
前項でも述べましたが、事故防止の対策は以下のようなことが有効とされています。
とはいえ、なかなか実行が難しい場合もあると思います。
洗濯機に近づけたくなくても、洗濯機が風呂場や洗面所に隣接していたら、無理です。
洗濯機がある部屋に子どもがいる時は、保護者がついているのがベストですが、それがいつもできるとは限りません。
可能であれば、これも前項で述べましたが、洗濯機がある部屋にカギを付けるのが有効でしょう。
また、チャイルドロック機能でずっとドアを閉めていると、洗濯槽にニオイやカビが発生する原因になります。
どの対策も今一つ決め手に欠けており、悩ましいところです。
こうなってくると、最も効果的なのは、子どもがいる場合はドラム式洗濯機を使わないことでしょう。
縦型洗濯機が未だになくならないのも、納得です。
しかし、縦型洗濯機でも踏み台などを使って、洗濯槽の中に転落してしまう事故が起きています。
どちらにしても注意は必要です。
洗濯機本体以外に、洗剤の誤飲にも注意が必要です。
誤飲事故は、子どもと高齢者を中心に起きています。
子どもは好奇心で、高齢者は飲み物だという思い込みで、洗剤を飲んでしまいます。
ここ2・3年では、パック型液体洗剤による誤飲事故が話題になりました。
ドラム式洗濯機の閉じ込め事故と並び、テレビでも取り上げられたので、印象に残っている人もいると思います。
国民生活センターが注意喚起に公表した資料によると、2014年4月に洗剤が発売されてから、翌年の1月までに152件の事故が報告されました。
パック型液体洗剤は、液体洗剤を特殊なフィルムで包んであります。
このフィルムは水に溶けやすく、濡れた手で持ったり、子どもが噛んだりすると、フィルムが破けることがあります。
しかも、フィルムは短時間で破けます。
国民生活センターが行ったテストでは、口に入れてから10秒足らずでフィルムが破けています。
さらに濡れた手でパック型液体洗剤を持つテストでは、わずか20~30秒で簡単にフィルムが破けています。
事故を防止するには、以下の2点が大切です。
- 洗剤は子どもの手が届かないところに置く。
- 洗剤を使い終わったら、必ずふたを閉めて定位置に戻す。
海外では、パック型液体洗剤を使わないことを推奨する専門家もいます。
しかし、パック型液体洗剤ではなくても、注意は必要です。
洗剤の容器ではなく、ペットボトルなどに詰め替えて使っていると、飲み物と間違えて飲んでしまうことがあり、危険です。
万一、誤飲してしまった場合は、水か牛乳を少し飲ませて、食道や胃粘膜を保護します。
そのうえで、病院を受診しましょう。
その際、吐物や泡が気管に入ってしまうと、肺炎になる恐れがあります。
無理に吐かせてはいけません。
事故を防ぐためには、まず洗濯機の使い方を正しく理解することが大切です。
基本的なことではありますが、説明書は一度目を通しておきましょう。
しかし、洗濯機そのものに起因する不具合については、ユーザー自身では防ぎきれません。
メーカーにユーザー登録制度があれば、登録しておきましょう。
万一、使っている洗濯機にリコールなどがあれば、知らせてくれます。
できれば、自分から定期的に情報収集をしておくと、なお良いでしょう。
ドラム式洗濯機の閉じ込め事故にしても、決して他人事ではありません。
事故は誰の身にも起こり得ることです。