プラズマクラスターは本当に効果がある?論文と実験から読み取る効果を解説

この記事を執筆するにあたって

シャープのプラズマクラスター空気清浄機KC-G50を現在稼働させています。 実際にプラズマクラスターによる効果が実感できるかどうかはかなり個人によっても差があるといわれ、筆者は残念ながら効果を実感することはできませんでした…

Written By あずま ようへい

目次

プラズマクラスターの効果について

シャープと言えばプラズマクラスター、プラズマクラスターと言えばシャープ。というほどまでにプラズマクラスター技術は同社を代表する言葉となっています。

「プラズマクラスターはシャープだけ」というキャッチコピーを聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
プラズマクラスターという技術自体は元々、2000年代初頭に国内で大流行したマイナスイオンブームをきっかけに生まれました。マイナスイオンブーム流行はその後数年で終息したのですが、シャープは当時からマイナスイオン技術を応用発展させた開発を行ってきていました。そして2000年代の終わりに「プラズマクラスター」として再発表した経緯があります。

プラズマクラスターは、マイナスイオンブームの時代に謳われた効能をはるかに上回る多彩な効果を持つとシャープは謳っており、2018年現在では除菌消臭アレルゲン分解効果の他に、集中力の増進やストレスの低減といった主観的なものに対する効能すらあるとされています。
参考URL:プラズマクラスターの効果 シャープ

本当にプラズマクラスターがこのような効果をもたらしているとすれば、確かに画期的なシステムだと言えます。多くの医療施設にプラズマクラスター搭載空気清浄機が設置されているのもうなずけます。
…ですが、これらの効果は本当にあるのでしょうか?本記事では、論文を中心にプラズマクラスターが及ぼす効果の実態と、シャープが謳う性能が本当にあるのかどうかについて話していきたいと思います。

プラズマクラスターとは?どんな効果があるかを解説

2018年現在、シャープは公式サイトにて以下のような効能をプラズマクラスター技術で実現しているとしています。

### プラズマクラスター7000

浮遊カビ菌の除菌(635分で除去率99%)、浮遊ウイルスの抑制(約18分で99%抑制)、浮遊菌の作用を抑える(約51分で99%抑制)浮遊アレル物質の作用を抑える(約51分で99%抑制)、たばこ付着臭の分会・除去(約90分で気にならないレベルまで消臭)、静電気を抑制(約360秒で、初期電位5kVが0.5kVまで減衰)

プラズマクラスター25000

浮遊カビ菌の除菌(201分でで除去率99%)、付着カビ菌の増殖を抑える(8日後に付着カビ菌の増殖を抑制)、浮遊ウイルスの抑制(約9分で99%抑制)、付着ウイルスの作用を抑える(約10時間で99%抑制)、浮遊菌の作用を抑える(約14分で99%抑制)、浮遊アレル物質の作用を抑える(約14分で99%抑制)、たばこ付着臭の分解・除去(約55分で気にならないレベルまで消臭)、静電気を抑制(約80秒で初期電位5kVが0.5kVまで減衰)、お肌にツヤを与える(運転20分以後に肌にツヤを与える効果が確認された)

プラズマクラスターNEXT

浮遊カビ菌の除菌(約84分で除去率99%)、付着カビ菌の増殖を抑える(8日後に付着カビ菌の増殖を抑制)、浮遊ウイルスの抑制(約9分で99%抑制)、付着ウイルスの作用を抑える(約7.5時間で99%抑制)、浮遊菌の賞を抑える(約14分で99%抑制)、浮遊アレル物質の作用を抑える(約14分で99%抑制)、たばこ付着臭の分解・除去(約30分で気にならないレベルまで消臭)、付着ニオイ原因菌の除菌(9日後に99%抑制)、静電気抑制(約40秒で初期電位5kVが0.5kVまで減衰)、お肌にツヤを与える(運転20分以後に肌にツヤを与える効果が確認された)ストレスがたまりにくい環境をつくる(1分後と5分後のストレス度合いで有意な差が認められた)集中を維持しやすい環境をつくる(1分後と10分後で集中度合いに有意な低下が認められた)それぞれ8時間運転させた状態の部屋で計測

引用元:プラズマクラスターの効果 シャープ

プラズマクラスターには現在3つのグレードがあり、1立方センチメートル当たりのイオン濃度で名前が変わっています。(7000個ならプラズマクラスター7000、25000個ならプラズマクラスター25000、5万個以上ならプラズマクラスターNEXTといった具合です)
プラズマクラスターのみイオン濃度が5万個以上と、あいまいな表現になっていますが、上に載せた記述を見ると、基本的にイオン濃度が高いほど効果が表れるまでの時間が短く、多彩な効果が発揮されるようです。

除菌消臭、ウイルス抑制に静電気抑制、保湿と癒し効果など、本当に色々な作用をもたらすプラズマクラスターですが、この正体はプラズマ放電によってつくられた空気中の酸素と水素に由来するイオン物質だとされています。

参考URL:プラズマクラスターとは シャープ

さらに細かく解説すると、イオン物質の中で実際に上記の効能を発揮しているのはヒドロキシラジカルという極めて不安定な物質と、放電によって生まれるオゾンであり、とくにヒドロキシラジカルはいわゆる活性酸素と呼ばれる物質の一つで、たんぱく質や脂質、アミノ酸といった生き物を形作る物質にふれ次第即座に反応しこれらを変性させることで知られています。(老化の原因物質だとも言われています。)
またオゾンも、殺菌や除菌に使われており、濃度によっては人体にも悪影響を及ぼすほどの反応性をもつ物質です。(言い換えれば、濃度次第では確かな効能があると言えます。)

本当に効果はあるの?論文から読み取るプラズマクラスターの効果

前項ではプラズマクラスターがもたらす効果の種類と、プラズマクラスターとはいったいどんな存在なのかについて軽く説明しました。本項では、より詳しくプラズマクラスターの実態について論文を交えながら書いていきます。

まずアレル物質の抑制効果についての論文を見つけたので、見ていきます。

参考URL;放電プラズマにより生成したクラスターイオンを用いた 室内浮遊アレルゲン失活技術 シャープ

この論文では直径14cm、高さ50cmのケースにアレルゲン物質となるダニを粉砕したものを散布し、そこにプラズマクラスター発生器を取り付けてファンにより循環させることで疑似的な室内の様子を再現しています。
アレルゲン物質は具体的にはダニから採取した抗原です。これにプラズマクラスターを当てて抗原を変質させ、それを検出することで効果を実証しようとしっています。論文によれば、確かに効果が確認されており、また測定方法も不自然な点はみられません。

しかし、この実験では室内とは言い難いごく小さな空間に、イオン濃度が1立法センチメートルあたり平均10万個になるような環境にしてのものでした。このイオン濃度は、既存のプラズマクラスター搭載機のものをはるかに超える数値であり、常時高濃度が保たれるような小さな容器での測定である点が気になります。以上の点をふまえると、実際の室内空間では論文で発表されている効果はあっても、かなり小さなものに留まるものと思われます。

次に二つ目の実験であるアレルギー抗体の反応抑制効果についてですが、こちらは各辺1mの立方体で作った空間内にプラズマクラスター発生器を置いて実験をしており、実空間よりはずっと狭いものの一つ目の実験にくらべると現実的なサイズの空間で行っています。

注目したいのは、アレルギー反応性変化の項目にあるアレルゲン失活効果の項目です。論文によると低濃度のイオン(具体的には1立方センチメートル当たり2000~3000個)でも失活効果があるとされており、この濃度はプラズマクラスター搭載機の最も下位グレードであるプラズマクラスター7000のイオン濃度を下回ります。
このことから、実空間でもアレルゲン失活効果については効果があると言えそうです。
プラズマクラスター発生器から作られるイオン物質についての具体的な考察は、次の論文で説明がされています。

参考URL:正極性と負極性のクラスターイオンによる細菌不活化メカニズム シャープ

論文では、イオンの正体がヒドロキシラジカルであること、イオンによって細菌が駆逐される様子が観察されています。
プラズマクラスター発生器によってつくられた酸素イオンと、水素イオンが細菌に接触。この時両イオンが反応して極めて反応性の高いヒドロキシラジカルが発生、これにより細菌表面の細胞膜を破壊し、細菌を死に至らしめるとしています。
プラズマクラスター発生器は高電圧による放電(シャープ公式サイトではプラズマ放電としています)によってイオンを発生させるとしているので、同時にオゾンも発生していると思われますが、実験では、オゾン濃度は室内環境基準である0.05ppm未満であったようです。

実験ではプラズマクラスターによってシャーレ上に繁殖させた最近を除去していますが、こちらも実験環境が実空間とかけ離れているのが気になります。一つ目の実験以上に小さい縦21×横14×高さ14cmの容器内で実施しており、しかもシャーレの直上10cmという至近距離でプラズマクラスター発生器を設置しています。イオン濃度が1立方センチメートル当たり5000個と、濃度自体は極端に高くないものの、寿命の短いヒドロキシラジカルを考えるとこの実験環境は実際の室内環境を再現しているとは言えません。

では、より実際の使用状況に近い環境での実験をした例を見てみましょう。

参考URL:高性能の空中浮遊インフルエンザウイルス不活化を謳う 市販各種電気製品の性能評価 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター

実験では、より実空間に近い14.4立方メートルの密閉チャンバー内で実施しており、ウイルスの測定方法もより厳密なものとなっています。全体的に不確定要素を排除した確実かつ厳しい実験手法で行っています。
この論文では、結果としてはプラズマクラスターと、プラズマクラスター同様のイオン発生器(ナノイーやストリーマなど)を用いたものではナノイーにのみ効果が認められるというもので、プラズマクラスターにはウイルスを抑制する効果はないという厳しい結論が出されました。

日本環境感染症学会による検証でも、プラズマクラスターによる除菌効果は認められないとしています。

参考URL:殺菌力を謳う各種空気清浄電気製品の,塗布乾燥状態の細菌に対する効果の有無の検証

以上のことから、除菌やウイルス抑制の効果についてはかなり厳しい状況にあるということが分かってきました。
除菌やウイルスを抑制しているのは、実際にはHEPAフィルターをはじめとした高性能集塵フィルターがその役割を担っていると言えそうです。

消臭効果については確かにヒドロキシラジカルは反応性が高いため、ニオイの原因となっている物質を変性させますが、ヒドロキシラジカルの存在時間がかなり短いので、実際にどれだけ変性させられるのかは未知数となっています。
効果があるとすれば、同時に発生するオゾンがその役割を果たしていると言えるかもしれません。
静電気抑制効果については、イオンの性質上実際に抑制する効果はあると思われます。(筆者もほとんど唯一といっていい効果を実感している部分でもあります。)

保湿効果については、プラズマクラスターは湿度を上げる効果を持ってない以上実際に体感できるほどの保湿はできないと言えます。イオンによって運ばれる水よりも蒸発によって失われる水のほうが多い可能性が極めて高いと言えます。

集中力の増進やストレス軽減の効果については、シャープによる論文の発表と第三者による検証がまだ確認できていないため、本記事では保留とします。

結局のところプラズマクラスターは買い?プラズマクラスターの効果から考える筆者が考える使い方と是非

前項ではプラズマクラスターの実際の姿について見てきました。大まかにまとめると、

  • シャープが発表した論文では確かに効果があると結論しているが、実験環境が実空間とかけ離れている。
  • 第三者機関による実空間に近い環境での実験では、効果がないと結論された。
  • プラズマクラスターの効果を出すには、かなり極端な状況が必要と言える。

となりました。個人差はありそうですが、全体的にかなり厳しい評価がプラズマクラスターにつけられてしまいました…
静電気の抑制など、一部の効果はイオン発生器の性質上有効なものもあります。しかしウイルスの抑制や保湿などといった効能は現状客観的に確実に効果がでるとは言えなさそうです。

もしプラズマクラスターの効果を少しでも得られたいならば、できるだけイオン濃度の高いもの、例えばプラズマクラスターNEXTを搭載した製品を使えば効果を実感できるのかもしれません。

効果が見込めるおすすめの空気清浄機

前項でイオンをなるべく多く作り出せる製品がいいと書きました。具体的にはプラズマクラスターNEXTのものを選ぶといいでしょう。
2018年現在プラズマクラスターNEXTを搭載する空気清浄機はKI-HP100の1機種のみであり、選択肢がありません。またフラッグシップ機でもあるので価格も高くなっています。

より確実に除菌や消臭効果を得られたいという方はプラズマクラスター以外の製品を選ぶと良いでしょう。

前項の独立行政法人国立病院機構仙台医療センターによる実験で最も高い効果を得られたのはダイキンのストリーマ技術を用いた空気清浄機でした。論文では、ウイルス抑制をしたのはイオン機器ではなくフィルターの方だと結論していますが、ダイキンの一部機種はHEPAフィルターを上回る性能を持つTAFUフィルターを採用しており、恐らく実験で威力を発揮したのはこのTAFUフィルターによるところが大きいと言えます(実験ではストリーマ搭載機のみ他と比べて100倍の差がありました)。

また、ダイキンのストリーマは空気清浄機内という狭い空間で運転させるコンセプトなので、イオン濃度という点ではシャープの実験のような環境に近いかと思われ、プラズマクラスター製品よりは効果を実感しやすいかもしれません。

プラズマクラスターもストリーマも、放電によるイオン発生という仕組みは同じなので、実質的な違いはほとんどありません。(ストリーマは名前の通りストリーマ放電を利用しています。そのため放電による直接的な効果も期待できますが、前項の論文によると有意差は認められていません。)

まとめ

いかがでしたでしょうか。プラズマクラスター搭載空気清浄機を使用する筆者からすると、かなり厳しい現実を見せられた感じです…

しかし、客観的に効果がみられない以上、一部効能をのぞきプラズマクラスターによって効果を期待するのは難しい状況だというのが分かったかと思います。

実際に除菌やウイルス抑制、消臭をしているのはフィルターであり、より高性能なフィルターを搭載した空気清浄機を選んだほうが確実に「プラズマクラスターが謳っている効果」を実感できると言えるでしょう。

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あずま ようへい
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