電気系技術者としてLEDと蛍光灯の動作メカニズムに基づき、電気代の差がどのように現れるのか、解説できると思い、執筆しました。また、ちょうど手元に分解したLED電球もあったので解説に活用しました。
Written By えどう タロー
「LED電球の電気代が安いって聞くんだけど、ホント?」とか「LED電球って商品そのものが高いんだけど、本当に安いの?」とか、最近、LED電球が話題になっていると思います。
なんとなく、LED=安いというイメージがあるように思います。
街角の街路灯も次々と蛍光灯からLEDに変わってきていて、それによって自治体が支払う電気代が1/3になったなんてニュースもあります。
では、これまで電気代が安い、といわれてきた蛍光灯とLEDとでは、電気代はどのくらい違うのでしょうか?
今回は、蛍光灯とLEDの1ヶ月の電気代の違いについて調査してみました。
(以後、電気代は1kWあたり30円として計算しています)
参考:ITmedia 4900基の防犯灯をLED化するのはなぜ、埼玉県東松山市
まず、LED・蛍光灯の電気代について調べてみました。
蛍光灯のこちらの商品だと20ワット形で消費電力は18ワットです。
LEDと比較すると、消費電力は2倍になります。
このため、1ヶ月の電気代は・・・。
点灯時間 | 1時間/日 | 2時間/日 | 5時間/日 | 8時間/日 | 常時点灯 |
---|---|---|---|---|---|
電気代 | 16.2円 | 32.4円 | 81円 | 129.6円 | 388.8円 |
続いて、40ワット形です。
一方蛍光灯です。
これを元に、1ヶ月の電気代を計算すると・・・。
|点灯時間|1時間/日|2時間/日|5時間/日|8時間/日|常時点灯|
|--:|--:|--:|--:|--:|--:|
|電気代|34.2円|68.4円|171円|273.6円|820.8円|
調べてみると、概ね蛍光灯と比較してLEDは半分以下の消費電力・電気代であることが分かりました。
では、なぜLEDは消費電力が小さいのでしょうか?
答えはその動作原理にあります。
図作成:えどう
蛍光灯は、蛍光灯内で放電し、飛ばされた電子が蛍光灯内にある水銀原子に衝突することで、紫外線を放出します。
その紫外線が、蛍光灯に塗られている蛍光体に当たることで、光を放ちます。
撮影:えどう
例として、LED電球の内部写真を示します。LED電球はとてもシンプルな構造に見えます。
実は、LEDは内部で電気エネルギーを直接光エネルギーに変換しています。このため、熱を利用した白熱電球や、放電を利用している蛍光灯と比べるとエネルギーロスが少ないので、同じ光量を実現するのに低消費電力化することができます。
また、LEDは、非常にシンプルな構造で、電流が流れている間だけ発光することが可能です。このため、人の目で判別することができないくらいの点滅スピードにすることで、さらなる低消費電力化を実現することができます。
では、続いて、直管型のLEDと蛍光灯の電気代を比較してみましょう。
この商品だと、消費電力は10Wです。
この消費電力を元に、1ヶ月の電気代を計算すると、、、
|点灯時間|1時間/日|2時間/日|5時間/日|8時間/日|常時点灯|
|--:|--:|--:|--:|--:|--:|
|電気代|9円|18円|45円|72円|216円|
蛍光灯の商品の場合、消費電力は18Wでした。
この情報を元に、1ヶ月の電気代を計算すると・・・。
|点灯時間|1時間/日|2時間/日|5時間/日|8時間/日|常時点灯|
|--:|--:|--:|--:|--:|--:|
|電気代|16.2円|32.4円|81円|129.6円|388.8円|
続いて、40W形について調査しました。
LEDタイプのこちらの商品の消費電力は18Wでした。
この消費電力を元に、1ヶ月の電気代を計算すると・・・。
|点灯時間|1時間/日|2時間/日|5時間/日|8時間/日|常時点灯|
|--:|--:|--:|--:|--:|--:|
|電気代|16.2円|32.4円|81円|129.6円|388.8円|
こちらの蛍光灯タイプの商品の消費電力は36Wです。
この消費電力を元に、1ヶ月の電気代を計算すると・・・。
|点灯時間|1時間/日|2時間/日|5時間/日|8時間/日|常時点灯|
|--:|--:|--:|--:|--:|--:|
|電気代|32.4円|64.8円|162円|259.2円|777.6円|
蛍光灯からLED蛍光灯に置き換えることによって、電気代が半額程度になります。
たとえば、40W形の直管型蛍光灯をLEDに置き換えた場合、
1日中つけっぱなしの場合は年間で4656円の電気代が安くなります。
夜の間(8時間)だけつけていた場合でも、1555円の電気代が安くなります。
普通の蛍光灯はおよそ3年〜4年程度で寿命を迎え、LEDが10年程度で寿命を迎えることを考えると、イニシャルコストの差を考えたとしても、トータルコストでLEDの方が安くなる、といえます。
一般に
- 蛍光灯の寿命はおよそ1万時間
- LED蛍光灯の寿命はおよそ4万時間
といわれています。このため、LED蛍光灯に交換すると、次に交換するのは10年以上先、ということになるといわれています。
一般の蛍光灯を利用している場合、光の強さを調整する調光機能は、照明器具本体に搭載されます。
しかしながら、LED蛍光灯は、そのものが電子機器であるため、町名器具本体とは別に調光機能を搭載することが可能です。
アイリスオーヤマのLDFCL3240Nは調光用のリモコンがセットになったモデルです。「LEDの光が強すぎる!」という場合であっても、お好きな光の強さに調節することが可能です。
「それじゃ、何でもかんでもLED蛍光灯に切り替えれば良いのでは?」と思われる方も多いかもしれません。しかし、LED蛍光灯に切り替える上では、注意が必要です。
蛍光灯には点灯方式として2種類の点灯方式があります。
- グロースターター型(グローランプを利用するもの)
- ラピッドスターター型(グローランプを利用しないもの)
このうちの、ラピッドスターター型と呼ばれるタイプの蛍光灯を利用していた場合はLED蛍光灯にそのまま置き換えることができず、専用のコネクタを介すか、工事が必要です。
現在、大手メーカーでLED蛍光灯を製造しているメーカはアイリスオーヤマ*くらいで、他のメーカは蛍光灯からそのまま置き換えられるLED蛍光灯を販売していません。
このため、丸形LED蛍光灯も、直管LED蛍光灯も、コストパフォーマンスが優れているのは無名なメーカーです。
大手家電メーカーは照明器具ごと販売していることが多く、従来の蛍光灯からのそのままの置き換えは難しい場合が殆どです。
LEDは蛍光灯と比較して発熱しやすい構造です。
このため、密封構造の蛍光灯照明器具などにはLED蛍光灯を取り付けると熱が籠もってしまい、LED蛍光灯が故障するリスクがあります。
このため、事前にお使いの蛍光灯照明器具がLED蛍光灯に対応しているか確認する必要があります。
LEDから発せられる光は、白熱電球や蛍光灯とは違い、とても直進性の強い光になります。
このため、LED蛍光灯の真下はとても明るいのですが、
少し離れると暗くなってしまいます。従来の蛍光灯の照明器具にLEDを装着した場合、”光りのムラ”が発生する場合がありますので気をつけて下さい。
これらの注意点をもってしてなお、LED蛍光灯による電気代の安さやメンテナンス性の良さは優れていると言えます。
では、ここから、電気代が安くなるLED蛍光灯のお勧め商品についてご紹介します。
一般的な蛍光灯に買い換えた場合と比較して、どの程度使用したら費用対効果が上回るのか、についてもご紹介しますね。
従来の32W形と40W形を搭載している照明器具用に開発された
「一つの蛍光灯で二つの蛍光灯分の明るさ」という商品です。
アイリスオーヤマが販売しているため、他のメーカーと比較して信頼できると言えるでしょう。
調光機能を搭載している点もおすすめのポイントと言えます。
消費電力は31Wですので、
一般的な蛍光灯(68W)とトータルコストを比較すると・・・
種類 | 商品価格 | 消費電力 | 1000時間 | 2000時間 | 5000時間 | 8000時間 | 10000時間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
LED | 4280円 | 31W | 5210円 | 6140円 | 8930円 | 11720円 | 13580円 |
蛍光灯 | 1073円 | 68W | 3113円 | 5153円 | 11273円 | 17393円 | 21473円 |
5000時間使用すると、LED蛍光灯を利用した方がトータルコストが安いことが分かります。
また、蛍光灯の寿命といわれている10000時間使用すると、2倍近いコスト差が生まれてしまうことが分かります。
点灯時間の長い照明であればあるほど、LEDの方がコストが安いことが分かります。
30W形の丸形LED蛍光灯です。本体価格がリーズナブルで有りながら、安心のPSEマークを取得している製品です。
消費電力は14Wで、
一般的な蛍光灯(28W)とトータルコストを比較すると・・・。
種類 | 商品価格 | 消費電力 | 1000時間 | 2000時間 | 5000時間 | 8000時間 | 10000時間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
LED | 1960円 | 14W | 2380円 | 2800円 | 4060円 | 5320円 | 6160円 |
蛍光灯 | 714円 | 28W | 1554円 | 2394円 | 4914円 | 7434円 | 9114円 |
こちらも、5000得時間使用すると、LED蛍光灯の方が蛍光灯よりもコストパフォーマンスが優れていることが分かります。
続いて、直管型のLED蛍光灯についてお勧め商品を紹介します。
グロー式の直管40W形を利用している蛍光灯からそのまま置き換えが可能なLED蛍光灯です。
消費電力は18Wです。なんといっても嬉しいのは2年間のメーカー保証がついていること。初期不良などがあっても交換対応してくれます。
一般的な蛍光灯(36W)とトータルコストを比較します。
種類 | 商品価格 | 消費電力 | 1000時間 | 2000時間 | 5000時間 | 8000時間 | 10000時間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
LED | 1080円 | 18W | 1620円 | 2160円 | 3780円 | 5400円 | 6480円 |
蛍光灯 | 410円 | 36W | 1490円 | 2570円 | 5810円 | 9050円 | 11210円 |
こちらもやはり、5000時間を越えると、LEDの方がコストパフォーマンスが優れることが分かります。
グロー式の直管20W形を利用している蛍光灯からそのまま置き換え可能なLED蛍光灯です。1100lmという光量を持っていながら、製品について1年間の保証をつけています。
一般的な蛍光灯(18W)とトータルコストを比較します。
20W形であっても、5000時間を越えると、LEDの方がコストパフォーマンスが優れていることが分かります。
この記事ではLEDと蛍光灯の電気代について比較し、LED蛍光灯へ変更することのメリットや注意点について解説しました。
要点をおさらいします。
グロー式の蛍光灯からLEDに変更する場合、概ね5000時間を越えて使用する場合はLED蛍光灯の方が安い、ということが分かりました。
この記事が皆さんのお悩みの解決の手助けになれば幸いです。