ギターの上達のためには、地味な反復練習が基本と良く言われます。確かにスムーズにコードチェンジをしたり、テクニカルなフレーズを弾きこなすには、頭より指が覚えるまで繰り返し弾き続けるのが上達の近道です。
しかし、ただ同じことを黙々と繰り返しているとモチベーションが保てなくなることがあり、そんな時におすすめしたいのがイヤホンを使用してギターを練習する方法です。
今回の記事では、ギターとイヤホンを組み合わせて使うとどのようなメリットがあるのかということや、使用時の注意、選び方などを解説し、ギターに使いやすいおすすめのイヤホンをご紹介します。
特にギターを始めたばかりで、好きなアーティストの曲をカヴァーすることで練習をしている人は、自宅ではエレキギターを使って何も接続せずに黙々と弾いている人が多いでしょう。
確かにこの練習方法はとても有効ですが、飽きがくるのも事実。そんな時にイヤホンを使用することで楽しく練習できるほか、さまざまなメリットがあります。
ここでは、ギターの練習にイヤホンを使用するメリットをご紹介します。
ミスタッチのごまかしの効かないアンプラグドでエレキギターを練習することで、確かに正確な指使いを習得することが可能ですが、一方でエレキギターの大切な要素である譜面に表れない音の繊細なタッチを表現するには、できればスタジオ練習と同じ環境でアンプやエフェクターを繋いで演奏したいものです。
こんな時にアンプのフォーン端子にイヤホンを挿し込んでしまえば手軽にスタジオ環境を再現して練習できるというのが、ギターにイヤホンを使用するメリットの一つです。
イヤホンがないとアンプの大音量が周囲に漏れ、練習どころではなくなってしまうでしょう。
イヤホンを使うことで、スタジオと同じような環境を再現しながらも周囲に配慮せずにギターを練習でき、より実践的なテクニックを身につけることができるでしょう。
メリットの一つ目と関連していますが、音量を絞ることでギターの練習時間の制限が少なく、深夜などにも演奏しやすい点もポイントです。
特に大事なライブなどが控えていると、前日の夜遅くまで何度も繰り返し確認したくなりますが、何も接続せずに練習するとかえってフィーリングが狂ってしまい、当日のパフォーマンスに影響を与えることがあります。
イヤホンを使用することで、場所や時間に制限されず思う存分ギターを演奏することが可能です。
他のアーティストの曲はとても上手に演奏できるのに、複数人でスタジオに入ると全く合わせることのできない方がよく見受けられます。
これはほかのパートの音を聴くということに不慣れなためで、一人で真面目にコツコツ練習する人ほど、アンサンブルが苦手な傾向があります。
ほかの楽器のリズムに合わせて適切に演奏できることは、テクニカルな演奏ができることと同じくらい、場合によってはそれ以上に重要なスキルです。
これを上達させるにはバンドや楽隊ごとスタジオに入って繰り返し練習する方法がありますが、時間や予算の制限が出てきてしまい、こんな時にもイヤホンを使用するのがおすすめです。
ミキサーやオーディオインターフェースにCDなどの音とギターを入力してレベルバランスを取れば、擬似的にスタジオ環境を作ることができます。
この環境にイヤホンを接続して練習すれば、ギターの演奏スキルと他の楽器とのアンサンブルを意識したスキルの両方を一度に鍛えることができ、楽曲の中で自分がどのような役割を果たしているのかを知ることでフレーズの選択や構築能力も上がり、さらに作曲能力も養えるなど良いところだらけです。
ギターの練習を続けていくと、必ず自分自身で作曲したい欲求が出てくるでしょう。最近では楽曲製作のための環境構築のハードルが下がっていて、最も手軽かつ本格的なのが、パソコンに作曲ソフト(DAW)をインストールして製作するDTMと呼ばれる方法です。
デジタル出力端子がないピアノやボーカルなどはマイクを通して、エレキギターやベースなどはデジタル出力端子からオーディオインターフェースを介してパソコンにライン入力して録音することが多くなりますが、その際に出来上がってきた音をモニターする役割として、イヤホンやヘッドホンはほぼ必須になります。
スピーカーでモニターするという方法もありますが、どちらかといえば最終的に完成した楽曲が自分のイメージ通り仕上がっているかを俯瞰的に確認する用途に向いていて、細かい音まで聴きとりやすいイヤホンの方が、ギターなどの演奏時のモニター用に向いています。
ここまで、ギター練習の際にイヤホンを使用するメリットについて解説してきました。
ここでは、イヤホンを使用する時の注意点について考えてみましょう。
ギター練習をイヤホンを使って行う際にやりがちなのが、どんどん音を大きくして行ってしまうことです。
少し疲れてきたのでイヤホンを外して休憩し、再開しようとしたらあまりの爆音にびっくりすることがあり、これは音を大きくしすぎているわかりやすいサインです。
長時間イヤホンを使用するとどうしても耳が疲れてしまい、音が聴き取りにくくなり、聴こえないのでまた音量を上げて、という悪循環に陥りがちです。
一つに耳を傷める恐れがあること、もう一つは多くの音が同時に出ている状態で自分の音がどれかを判断しながら、ほかのパートの音も同時に聴くスキルを養いたいという点から、音量をむやみに上げるのはあまりおすすめできません。
どうしても自分の音を聴き取りたい場合は、全体のレベルを上げるのではなく、ミキサーやオーディオインタフェースなどでほかのパートのレベルを下げるのがおすすめです。
一口にイヤホンと言っても実にさまざまな種類があり、その中にはギター練習に向いたもの、向いていないものがあります。
例えばワイヤレスのイヤホン。ギターの練習時にケーブルが邪魔にならないことは魅力ですが、通信状況が悪い場合音飛びや遅延を発生することがあり、練習の妨げになり、付加機能により高額になりがちです。
または、意図的に低音をブーストさせたイヤホン。迫力ある音を出力してくれることはメリットですが、ギターの音を中心に聴きたい場合は低音が邪魔になりがちです。
では具体的にどのようなイヤホンがギター練習に向いているのか?次で解説していきます。
結論から言うと、「カナル型で有線型、なるべく周波数特性の偏りがないイヤホン」が理想的です。
カナル型とは耳栓のように覆うイヤホンのタイプのことで、現在の主流の形のため、選択肢も幅広いです。
音漏れが少なく外部の音もカットしてくれ、さらに細かい音が聴き取りやすいという特徴が、ギター練習の目的と合致しています。
反面、密閉性が高いことで耳が疲れやすく、細かい音を聴き取りやすい代償として広がりの少ないベタッとした音になりやすい傾向があり、低音が強調されやすい特徴もあります。
ギター練習での使用という前提で考えれば、ただでさえ低音の出やすいカナル型にローブーストを組み合わせると、さらにギターが埋もれてしまう可能性があるので、比較的フラット、あるいはやや中高音に特徴のあるイヤホンを使用することで、ギターの音が劇的に聴きやすくなるでしょう。
ギター練習に向いたイヤホン、向いていないイヤホンなどの特徴を解説してきましたが、ここでは実際の製品からギター練習におすすめのイヤホンをピックアップしてご紹介します。
カナル型であり、さらに音を正確に再現する目的で作られたモニタータイプと呼ばれるイヤホンであるMACKIE MP-120。
高音を中心に音を繊細に表現してくれ、かつ適度な低音もあり音がすっきりしすぎて味気ないということも起りにくいでしょう。
連続使用に耐える耐久性、コスパの面からも優秀なギター練習向けイヤホンです。
音質と価格の異常なコスパが魅力の茶楽音人 Co-Donguri-雫もギター練習用イヤホンにおすすめです。
音の特性として中高音がよく出ているので、カナル型なことも相まって細かい音を精密に再現してくれ、普通に音楽を聴く際にも活躍します。
低音が若干弱い特徴があり、それを迫力が足りないととらえるか音がすっきりとして聴き取りやすいととらえるかがポイントです。
そこそこのギターなら買えてしまいそうな価格の高遮音性イヤホンSHURE SE425。音の特性は「完全にプロ仕様」といった印象です。
とにかく余計な音が出ていないため、演奏時の音色、バランスなどのチェックには最適です。
DTMをしていて、しっかりしたモニター用のイヤホンの購入を考えている方にも自信を持っておすすめできます。
ここまで正確に音を再現すると、プレイヤーの技量が丸裸になりすぎるのが難点といえば難点でしょうか。
今回の記事では、ギター練習にイヤホンを使うメリットや選び方、注意点などを解説し、おすすめのイヤホンをご紹介してきました。
演奏の上達には反復練習も大切ですが、演奏環境もそれと同じくらい大切です。
皆様もイヤホンにこだわって、より素敵なギタリストになってください。