IPアドレスとは、パソコンなどのネットワークにつながる機器のネットワーク上のアドレス(住所)を示します。
インターネット上のIPアドレスは「グローバルIPアドレス」と言います。これに対して、インターネットではなく、企業内や家庭内などの限定されたネットワーク内のIPアドレスを「プライベートIPアドレス」と言います。
IPアドレスは、そのネットワーク内で必ず一意になる必要があり、世界中のすべてのネットワークにつながる機器がそれぞれ一意になるアドレスを持とうとすると、いくらアドレスがあっても足らないということになります。
また、すべての機器が世界に対してつながってしまうと、悪意のあるネットワーク利用者から攻撃を受けてしまうリスクもあります。
こうした事情から閉じたネットワーク内では、インターネットのアドレスとは別にIPアドレスを持ち、そのネットワーク内でIPアドレスを割り当てるという仕組みが必要となり、プライベートIPアドレスというものが使われています。
プライベートIPアドレスは、グローバルIPアドレスと重ならないように「RFC1918」(Request for Comments)という規格で、アドレスの設定ルールが決められています。
具体的には、下記3種類の範囲でアドレスの範囲を規定しています。
それぞれの範囲で設定することのできるネットワーク機器のアドレス数が変わってきます。
このアドレスの数は、先頭の数字で決まっているのではなく、4つあるアドレスの数字(xxx.xxx.xxx.xxxの「xxx」の部分)の組み合わせの数で決まってきます。
例えば、192から始まるプライベートIPアドレスでは、3つ目の数字が0~255の256個、4つ目の数字も0~255の256個設定することができ、256*256=65,536個となるわけです。
企業内や家庭内といった閉じたネットワークの中でパソコン等の機器に割り当てるプライベートIPアドレスが先ほど記載したルールに基づいて決定されます。
先頭の数字で3種類に分かれますが、前述したようにそれぞれアドレス設定できる個数が決まってくるため、家庭内LANでは「192.~」が設定されることが多く(家庭向けのインターネットルーターはほぼこの設定になっていると思います)、企業であれば一定数以上の数を確保するため、「172.~」のプライベートアドレスを設定することが多くなります。
アドレスの3つ目や4つ目の固定ではなく、数字に範囲を持つアドレスの設定値は、ルーターによって管理され、設定されます。
特に家庭向けでは、ルーターのもつDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)機能により、ルーターから自動的に重複しないようにアドレスが設定されるため、ユーザーは意識することなく家庭内・企業内のネットワークでパソコン等の機器を使用することができます。
DHCP機能を使わずに、ユーザー側でIPアドレスを設定する場合は、ルーターが管理しているIPアドレスの範囲で、重複しないようにユーザー側でIPアドレスを設定する必要があります。
<DHCPで採番される場合の設定例>
<ユーザー自身がIPアドレスを設定する場合の例>
家庭向けのルーターでは、ほとんどの機種が家庭内のプライベートIPアドレスを「192~」で設定し、DHCP機能により自動的に割り振るように初期設定されています。
家庭向けで6万を超えるようなIPアドレスが必要となることはほとんどありませんし、ネットワークに接続するのに難しい設定をせずに済むように設定しているもので、それ自体に問題はありません。
正直なところ、家庭内であれば、192からはじまっているIPアドレスを172から始まるIPアドレスに変更する意味はありません。IPアドレスの値によって通信速度が速くなるようなことがあれば意味もありますが、ただのネットワーク上の住所に過ぎないため、つながることができれば、172でも192でも同じだからです。
極論すれば、ネットワークの勉強のためだったり、個人的な数字の好みとも言えますが、IPアドレスを192から始まるアドレスではなく、172から始まるアドレスにするにはどうすればいいでしょうか?
①ルーターの設定画面をchromeなどのブラウザで開きます。たいていの場合は「192.168.0.1」になります。
②ルーターの設定画面で、ユーザー名・パスワードを入力し、ルーターの管理画面にログイン後、ルーターが管理している家庭内のネットワークアドレスの範囲を変更します。
<変更前>
<変更後>
③DHCPによりIPアドレスを設定する場合は、ルーターからIPアドレスを再取得します。コマンドプロンプトを開き、「ipconfig /renew」と打つことで設定されます。
④DHCP機能ではなく、自身でIPアドレスを設定する場合は、ネットワーク設定から自身のパソコンのIPアドレス設定を変更します。
IPアドレスはこれまで見てきたように、4つの数字を組み合わせから作られていますが、1つ1つの数字は「0から255まで」の範囲になっています。
なぜ「0から255まで」なのか?どういう決まりで数字が決まるかを説明すると、この数字は人間が見やすいように3桁の数字で表現していますが、本来は8ビット×4=32ビット(4バイト)の情報で形作られています。
この32ビットの情報を8ビットずつ2進数で表現したものを10進数に変換したものが「0から255まで」で表現されたIPアドレスの値になります。
8桁の2進数で表現できる10進数の数字が「0から255まで」の理由です。
<IPアドレスとビット化イメージ>
通常、家庭内でインターネット等を使用するのにIPアドレスを意識することはあまりありません。複数のパソコンやスマホをWiFiを使う等して家庭内ネットワークにつなぐとしても、たいていの場合はルーターのDHCP機能で自動的にIPアドレスが割り振られるからです。
それでもIPアドレスの設定ルールや仕組みを理解しておけば、家庭内で特定のパソコンやスマホが突然に家庭内ネットワークにつながらなくなった時に、IPアドレスが全然違う値になっていないだろうか?など調査するきっかけになるため、知っていて困るものではないと言えます。
IPアドレスの簡単な仕組み、172から始まるIPアドレスはなにものなのか、プライベートIPアドレスとはなにか、についてここまでまとめてきました。
スマホやテレビやDVDレコーダーがネットワーク対応するなど、パソコン以外にも家庭内に複数のネットワークにつながる機器があることはもはや珍しくないため、家庭内LANでネットワークの設定を行う際に、この192や172から始まるIPアドレスはどういうものか?という疑問への参考にしていただければと思います。