なんでも調理できると思っていた電子レンジでゆで卵ができないなんて!と思った方が多いと思います。卵は爆発しますから、卵そのままでは入れないように、という電子レンジの注意は何故あるのでしょうか。その理由と対応を考えます。
調理用機器では古くあるものはコンロです。コンロのエネルギー源は、薪、炭、都市ガス、石油、プロパンガス、電気などいろいろありますが、共通なのは直火であることです。直火では鍋を使えばなんでも焼けたり、茹でたり、炒めたりができます。
欠点は火を使うという安全性の問題が挙げられます。1960年代から、火を使わない、電子レンジと電磁調理器すなわちIHヒーターが出てきました。電子レンジは、比較的短時間で調理ができ、鍋を使わないで、使用が簡便なことで、一家に一台くらいにまで普及され、コンロと併用する家庭が多いのが実情です。
IHヒーターは電磁誘導で熱を生じさせるもので、コンロに替わる、ガスを使わない調理機器としてオール電化の家庭に入ってきています。IHヒーターの使い様はコンロと全く同様になります。
電子レンジは、マグネトロンという発振器からマイクロ波を発生させます。マイクロ波が食材の中に入り込んで、食材の中の水分に当たります。水分の水分子がマイクロ波のエネルギーを受けて振動し摩擦熱が発生し、食材の内部から加熱されることになります。
電気コンロとの違いは、電気コンロはニクロム線という発熱体を熱して赤外線で食材の表面を加熱しますので、原理上で違いがあります。電気コンロで内部まで熱が通るのは表面からの熱が伝導で内部に伝わるからです。電子レンジでは内部での熱が表面に伝導されます。
水分を有しない陶器はマイクロ波を透過させるだけで調理されませんが、食材からの熱の伝導で熱くなることがあります。マイクロ波は赤外線よりも波長が長く、熱くありません。金属はマイクロ波を反射します。
電子レンジで卵を調理すると爆発が起こります。この原因を考えましょう。
卵の黄身は膜に覆われていて外界との接触がありません。また、黄身を覆う白身も殻に覆われていて外界との接触がありません。密閉空間内にあります。
黄身あるいは殻の中という密閉空間内の水が電子レンジにかけられると熱により急激に気化して膨張し、密閉されていた中のものが一気に破砕されます。これを水蒸気爆発と呼びます。
卵の爆発は、水蒸気爆発です。鍋のふたの小さな穴をふさいで沸騰させれば、鍋のふたが吹っ飛びますが、同じことです。
爆発の原因は卵の構造にあって、電子レンジが卵を内部から熱することによって生じるものです。
電子レンジでの卵の爆発は、卵の殻無しでも起こるでしょうか?
先に述べた卵の水蒸気爆発をもう少し詳しく見てみましょう。電子レンジにより、卵の内部が加熱されます。黄身に含まれる水分が沸騰します。黄身は外界と隔離されていますから外気より高圧になり、沸点が上がります。黄身の体積が増加して、白身と殻を破ります。このとき黄身の水分が急激に気化して爆発が起こります。
黄身が膜に覆われています。電子レンジにより黄身の中の水分温度が急激に上昇すると、黄身が膜を破って爆発します。
卵の爆発は、殻があっても殻がなくとも発生します。
鶏卵以外も殻や膜で内部のものが密閉されている食材で爆発が起こります。小さな卵のたらこでも発生します。また、薄い膜を有するイカやソーセージでも起こります。
殻のあるものでは、銀杏や栗などが要注意です。殻や膜のない食材でも皿に盛ってラップできっちりと閉めて電子レンジを強くあるいは長時間かけると中のもが沸騰してラップを破ることがあります。これも爆発です。
電子レンジを使って卵を爆発させないで調理する方法はあるでしょうか?水蒸気爆発を起こさせない方法を考えましょう。
食材に小さな穴をあけて空気の逃げ場を作ればよいわけです。鍋ややかんのふたの穴の要領です。殻有の卵では難しいです。
殻を割って取り出した生卵で、黄身の部分に小さな穴を開けてから電子レンジで調理すると爆発は起こりません。
小さな穴は尖った先をもつものを使って簡単に開けられます。爪楊枝とか竹串とかで十分です。こうすると目玉焼きが出来上がります。
また、ゆでた卵を温めなおすことはできるでしょうか?ゆで卵は密閉空間になっていますから、殻有のままでは爆発します。殻を剥いて、割って密閉空間を崩してから電子レンジに入れれば大丈夫です。
内部のものの温度を上げずに沸騰させなければ爆発はしません。電子レンジでの卵の調理では、この温度制御は難しいでしょう。
生卵をそのままの状態で、なにか特殊の容器で爆発を防げないでしょうか?金属はマイクロ波を反射しますので調理にはなりません。
プラスチックはマイクロ波を透過しますが、爆発は防げません。特殊な器具が市販されています。ゆで卵メーカーという商品です。生卵をマイクロ波が反射される金属で覆い、金属の外にある容器から蒸気を卵の下部から当てて温める構造です。卵以外にも適用されます。一部の器具では安全性を指摘されていました。
電子レンジでゆで卵は作れないか、整理してみましょう。
電子レンジで爆発させないでゆで卵を作るには、生卵にマイクロ波が当たらないようにします。生卵を金属で覆えばマイクロ波は当たりません。卵をゆでるには金属で覆ったままお湯に漬けます。
すなわち金属で覆った卵を水の入ったガラスや陶器の容器に入れて電子レンジをかけます。水は沸騰しますが、中の卵は沸騰しません。卵は鍋でゆでられるのと同じようにゆでられ、ゆで卵ができます。
卵を覆う金属はアルミホイルでよいのですが、アルミホイルを上手に覆わなければ、アルミホイルの尖った部分にマイクロ波がぶつかり火花を散らして発火する恐れが出ます。市販の安全なゆで卵メーカーを使うのが安全です。
電子レンジで爆発させないでゆで卵を温めなおすには、卵の中の密閉空間を破ることが必要です。ゆで卵の殻をむいて、竹串でも使って黄身まで届く穴を開けるか、ゆで卵を二つに切ってから、電子レンジにかければ爆発しません。
電子レンジを使って中の黄身が沸騰しないくらいの温度で爆発せずに上手くゆで卵を温めることができる場合があります。
しかしそのようなゆで卵でも爆発寸前の水蒸気を含んでいますから、取り出してから爆発することがあります。ゆで卵でも完全な姿で電子レンジをかけるのはご法度です。
電子レンジは万能ではありません。安易に使いがちですが、トラブルが出る場合がありますから気を付ける必要があります。
液体を温めるとき過熱状態になって突沸といって液体が飛び出す、爆発に似た現象が起こるときがあります。牛乳など対流のしにくい粘度の高いものには注意する必要があります。基本的に電子レンジにより液体を温めることはしない方がよいでしょう。
電子レンジは水分を含む食材が対象なので、水分の少ない食材は不適当であると考えてよいでしょう。サツマイモで爆発事故が起こったことがあります。水分の少ない食材の場合は、水の入った容器の中に食材を入れて電子レンジ加熱を行うようにしなくてはなりません。