調理用家電は様々な物がありますが、煮る焼くなどといった本調理の前には食材を適切な形に切ったり混ぜ合わせたりする下準備が必要です。それら下準備を行う代表的な家電として『フードプロセッサー』と『ミキサー』があります。
どちらも古くからある家電ですが、活用している場面を日常で見ることが少ないためご存じない方もおられるでしょう。
今回はそんなフードプロセッサーとミキサーを、それぞれの違いや得意な加工方法などの説明を交えながら紹介してみたいと思います。
『ミキサー』という名前は和製英語で、海外だと『ブレンダー』と呼ばれています。
ですので海外メーカーの製品などで『ブレンダー』と表記されているものは、日本のミキサーと同じ物だと思ってもらってかまいませんが、例外として『ハンドブレンダー』と『ハンドミキサー』はまったく別のものになりますのでご注意ください。
左:ハンドミキサー(泡立て器) 右:ハンドブレンダー(手持ち型ミキサー)
包丁や専用器具などを使っておこなう『みじんぎり、すりおろし、混ぜ合わせ』などの下準備(加工)が短時間で行える調理用家電です。
フードプロセッサーならタマネギのみじん切りなど食材の加工が数秒~10秒程度で終わるため、大量に食材を扱う食堂など業務用として利用されることが多かったのですが、その便利さから一般家庭でも使われるようになりました。
手作業だと面倒な『きざむ』『する』『混ぜる』の作業を素早くかつ楽に行うことができます。
例えば【タマネギを刻み】【挽肉と混ぜ合わせ】【和風ソース用の大根おろしを作る】といった『きざむ、混ぜる、すりおろす』3種の工程があるハンバーグを作るときなどは重宝します。
肉や魚を挽いて『ミンチ』を作ることもできます。「挽肉が少し欲しいけれど、ストックが無い!わざわざ買いに行くのも…」といったときに豚肉、鳥肉、牛肉などを適切な大きさにカットしてフードプロセッサーに入れればお好みの分だけ挽肉を作ることができます。同じように魚のつみれなどを作る際にも使うことができます。
別売のカッターを購入したり機能の豊富な上位機種のフードプロセッサーであれば、スライサーとしても使うことができ、さらにはうどんやパスタ生地などをこねることができる機種もあります。
冒頭にハンバーグを作る際に重宝すると書きましたが、一般的な家庭用フードプロセッサーはケース容量が小さい物が主流なので、タマネギのみじん切り、肉挽きなど個々の作業は問題なくとも、双方を混ぜあわせた場合は処理可能量を超えてしまうこともありえます。
大量のハンバーグを作る場合などは挽肉は作らず購入し、フードプロセッサーで行うのはタマネギのみじん切りだけにして、その後は大きなボウルに移して手ごねで作業するなど、フードプロセッサーは補助的な扱いに限定した方が効率よく調理をすることができるでしょう。
ミキサー(mixer)やブレンダー(blender)の名前から分かるとおり『混ぜ合わせる』事に特化した調理用家電です。
フードプロセッサーでの加工は手作業でもできますが、ミキサーでの加工は家庭にある調理器具での代用が難しいため一般家庭でも購入されることが多く、一度は見たことがある人もいるでしょう。
かつては『ジューサーミキサー』とも呼ばれており、スロージューサーが生まれるまでは果物や野菜からジュースを作るといえばもっぱらミキサーの役目でした。
果汁のみを搾り出す『ジューサー』とは異なり、素材を砕いてそのまま混ぜ合わせることができるミキサーは食物繊維たっぷりなジュース、いわゆる『スムージー』を作るのには最適です。
茹でてある程度柔らかくした野菜をさらに砕いてスープなども作ることができますので、ミキサーを使ってスムージーや野菜スープを作れば手軽に食物繊維を摂ることができるでしょう。
食べにくいものを砕いてペースト状に加工できるミキサーは離乳食を作るのにも向いています。
食材を煮込んで柔らかくするのには時間がかかりますが、ミキサーでゆるめのペースト状にしてから火を通せば食材への火の通りも早く、より短時間で離乳食を作ることができるでしょう。
ただしミキサーによってはモーターに負荷が掛かるので粘度の高い離乳食や介護食用ペーストの投入や作成を禁じていたりする物もあるので、作成可能かどうかしっかり説明書で確認する必要があるでしょう。
氷を砕くことに対応したミキサーなら果物と氷、あるいは凍らせた牛乳と混ぜ合わせオリジナルのシェイクを作ることもできます。
ただ氷を砕くことに対応しているものでも、コンビニで売っているウイスキー用などのロックアイス(大きな氷)は対応していないことが多いので、氷を砕く際は必ず説明書に従った大きさのものを使用しましょう。
基本的にミキサーは乾燥した食材を処理することができませんが、『ミル機能(ミルカップ)』を備えたミキサーであれば大豆からきな粉を作ったり、煮干しからだし粉を作ったり、魚介類などの乾物からオリジナルのふりかけなどを作ることができます。
ただし大豆は炒って完全に水分を飛ばしてから、煮干しは頭と大きな骨は取り除いてから、乾物は固すぎるのはダメなどの細かな指定があったり、ミキサーの仕様によっても禁止食材が異なるので注意が必要です。
水分を含んだ物に対応したミルならマヨネーズなども作ることができるので、加工できる食材をしっかりと把握し、上手く使いこなせれば調理の幅も広がることでしょう。
ミルと言えばコーヒー豆ですが、ミキサーによって扱いが全く異なります。容器が傷つくので禁止されているものもあればメニューに載せて推奨するものもあれば、できるけれど粗く風味も飛んでしまうのでおすすめできないと書かれているものもあります。もしコーヒー豆のミル機能を求めるのであれば必ず対応しているかどうか購入前に確認する必要があるでしょう。
フードプロセッサーとミキサー両方とも『きざむ(あるいは砕く)』と『混ぜる』ができる点で似ている機械のように思えますが、フードプロセッサーは『料理の下準備として食材をきざむなどの加工がメイン』でミキサーやブレンダーはその名の通り『カットした食材を更に細かくして混ぜ合わせるのがメイン』となっており、機能や形状はもとより使う目的そのものに違いがあります。
それぞれを使ってできる加工後の状態をざっくりと分けると、フードプロセッサーは『固形→固形/ペースト』、ミキサーは『固形→固形/ペースト/液状』となりミキサーの方が多機能に見えますが、ミキサー本体で固形→固形(みじん切りなど)を行おうとすると加減が難しく雑な仕上がりになりますので実質できないと思ってください。
「ミキサーでもみじん切りくらいはできるだろう」と実験してみた結果がこちらです。
(写真は著者撮影)
ご覧の通り、タマネギが浮いてしまって刃に当たるまで落ちきらず切れなかったり、逆に一部ペースト状になってしまったりしてみじん切りとはほど遠い状態にしかなりませんでした。
ミキサーでできる固形→固形の加工は『ミル(小容量)限定』と思っておいた方が賢明でしょう。
参考元:価格.コム
『食材を細かくきざみ、混ぜ合わせたり、ペースト状にする』という作業は一応どちらもできるのですが、上で示したようにミキサーの処理は加減ができないのでしっかりとした食感を残した処理が難しく、一般的なフードプロセッサーは液体を混ぜる用途は仕様外ですので代用や兼用は考えない方がよいでしょう。
どうしても兼用可能な調理器具が欲しいのであれば『チョッパー機能(ケース)付きハンドブレンダー』をおすすめします。
ハンドブレンダーは手に持って使うミキサー(ブレンダー)ですが、ミキサーの得意な『混ぜる・つぶす』はもちろん、フードプロセッサーの領域である『みじん切り』『肉挽き(魚のあらびき)』もチョッパーケース付きの物ならできるのです。手に持って作業ができるので自由度が高く、食材をボウルに入れたまま混ぜたり、砕いたりといった処理ができるのも特徴です。
疑り深い筆者は「いやいやハンディーだからそれほどしっかりとはできないだろうし、ボウルで処理した場合も飛び散ったりするんじゃない?」と思ったので、死蔵されていたハンドブレンダーをひっぱりだして実際に使ってみました。
(字が見にくい場合ページを拡大してご覧ください)
合計作動時間2秒(タマネギ半分につき1秒)で見事なみじん切りができました。ミキサーの時と違って拍子抜けするほど簡単にそして短い時間でできたのでテンションが上がり、作ったオニオンペーストでオニオンブレッドも作ってみました。
大抵のハンドブレンダーは専用カップが付いており、それを使えば普通のミキサーの様にミックスジュース目的でも使用することが可能です。もちろんボウルに入れて撹拌することも可能なのでミキサーとしては据え置き型よりもずっと使い方に幅があるように思えます。写真には撮りませんでしたがボウルでミカンとリンゴを砕いてジュースにしてみましたが飛び散ることもありませんでした。飛び散りに関しては私個人の感想ですが、ハンドミキサー(電動泡立て器)の方がよほど気を遣いますね。
可能な加工の種類はフードプロセッサーに比べれば少ないですが、ミキサー機能はハンディーではあるものの据え置き型ミキサーに劣るという感じは受けませんでした。機種によっては泡立て器アタッチメントを装着可能なものもあるので、ハンドミキサー(泡立て器)としても使用することができ、真の意味で1台3役をこなす調理家電と言えるでしょう。
今回はしっかりとした機能を揃えたものを中心に、おすすめのフードプロセッサーとミキサーを紹介してみようと思います。
なおすべての参考価格は2018年1月現在のものとなっております。
参考価格12,160円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
『MK-K81』はPanasonicのフードプロセッサーでは最上位機種でみじん切りやすりおろしはもちろん、スライスやパン生地のこね作業などもこなせるのが特徴です。ただ容量は『ハンバーグたね 500g』『パン生地練り 小麦粉150gまで』となっており、他の一般的なフードプロセッサーと同様に加工可能な量は少なめです。
2011年に発売し世代交代もないことから、フードプロセッサー機能面で充分に完成されている様子がうかがえます。
筆者が家電の最上位機種を薦めるのは非常に珍しいことですが、フードプロセッサーに関してはできることが少ない機種を買ってもあまり利点がありません。手では面倒な作業を代わりにやってもらうための家電なのですから、対応した機能が多いに越したことはないでしょう。
仕様参考:Panasonic公式
参考価格19,643円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
クイジナートの名は日本ではあまりがなじみがありませんが、海外では古くからフードプロセッサーを扱っている超有名メーカーです。『ウィザードリィに出てくるカシナートの剣』の元ネタだと知っている方は筆者と気が合うかもしれません。
クイジナートの『DLC-191J』は一般的なフードプロセッサーの弱点である『処理できる量の少なさ』を容器の大容量化(1.9リットル)で補ったモデルです。加工可能な種類は『きざむ』『スライス』『千切り』『おろす』『こねる』と一通り対応しています。
既にフードプロセッサーを常用していて「もうすこし処理できる量が多いモデルがあれば…」と悩んでいるのでしたら、買い換え候補の一つとしてみてはいかがでしょうか?
仕様参考:Cuisinart公式
参考価格6,980円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
「今時の調理家電は全部マイコン制御だろうに」と製品名に突っ込みを入れたくなる、タイガー魔法瓶製フードプロセッサーです。
この『SKF-G100』ちょっと変わった製品で容器に『ステンレスカップ』を採用していて、スープやジュースなど液体調理も対応したフードプロセッサーです。(ご想像の通り「これならミキサーの代用つとまるんじゃないか?」と筆者も思いました)
もう一つの特徴として本体カップ内にアタッチメントをまとめて収納できるというものがあり、フードプロセッサーにありがちな悩みである場所をとるので置き場(しまう場所)に困るといったこともありません。
色もボルドーとブラウンの2色があり、おしゃれなキッチンにおいても違和感がありません。
でも値段が安くなりすぎているのが少し気に掛かるのですよね。店頭価格1万円弱、Amazon 6,980円と結構な差があり、ネット通販で過剰に安くなる製品の場合何かしらの原因があるので、疑り深い筆者はSKF-G100-Vを手放しでおすすめできないのが残念です。
仕様参考:タイガー魔法瓶公式
ジュースやスムージー作成目的でミキサーが欲しいのか、兼用目的でハンドブレンダーが欲しいのかで分かれると思ったので、それぞれ二機種ずつ紹介してみます。
参考価格8,460円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
象印のミキサー『BM-RT08-GA』は氷も砕くことができ、ミルカップは水を含んだ物も対応しているので、マヨネーズやオリジナルソースなども作ることができます。それとは別に『お茶用ミルカップ(※)』が付いてくるのも特徴のひとつです。
他のミキサーとの大きな違いとして簡易洗浄機能を搭載されている点があげられ、ぬるま湯と中性洗剤を容器に入れ『クリーニングボタン』を押せば刃のまわりや、落ちにくい油汚れも大まかに落としてくれるという機能があることもおすすめ理由の一つです。ミキサーはとにかく使った後の洗浄が面倒なので、こういった機能は非常にありがたいですね。
※...抹茶ほど細かくならないので、完成品はあくまで『粉末緑茶』だそうで、説明書に記載されているクッキングメニューの名前も抹茶塩>緑茶塩、抹茶蒸しパン>緑茶蒸しパンとなっています。
仕様参考:象印マホービン公式
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『MX-X701』も氷の粉砕が可能で、ミルも水を含んだものも対応となっています。カップが大きいので軽くて浮きがちな葉物なども、スイッチを切って付属のスムージーバーで沈ませてから再度撹拌することができます。
安価なジェネリック家電のミキサーを買ってしまい対応食材の少なさ、作りの甘さに不満を覚えた人へおすすめしたいミキサーです。非常にオーソドックスなつくりで目立った特徴はなく、1万5千円とミキサーにしてはやや高額なのが欠点ですが、その分『氷の粉砕』や『ウエット食材対応ミル』となっているので、あとは耐久性に期待したいところです。
仕様参考:Panasonic公式
参考価格7,400円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
アタッチメントはひねり込み着脱方式。チャイルドロックも搭載しており安全性を充分考慮した作りになっているのがうかがえます。自宅のハンドブレンダー、セーフティ付いてないんですよ…
残念ながらこの『MX-S300』では氷を砕くことはできません。泡立て器も連続運転時間は2分までとなっているので、ホイップやメレンゲを作ろうとしたときに2分以上掛かりそうな場合は一端休憩を挟む必要がありそうです。
もっと安いハンドブレンダーもあるのですが、あまり安すぎると耐久性も心配なのである程度の品質が保証されているPanasonicブランドをおすすめとして選びました。
仕様参考:Panasonic公式
参考価格 11,580円 / 画像をクリックするとAmazonに移動します
『MQ745』一番の特徴は見ての通りチョッパー容器の大きさ(1250ml)です。数あるハンドブレンダーの中で大きいチョッパー容器のモデルを出しているのはブラウンぐらいです。ハンドブレンダーとしては珍しいアイス用カッターが付いている点も見逃せません。
推奨のお手入れ方法として、『付属の専用計量カップに洗剤とぬるま湯を入れて10~20秒スイッチを入れるだけ』となっており『本体、ビッグチョッパー接続部、泡立て器接続部』以外は食洗機で洗えることもメリットの一つとなっています。ホコリをかぶる原因の一つである手入れの面倒さが軽減されているところもこの製品をおすすめした理由のひとつです。
アタッチメントの取り外しはワンタッチで行える『リリースボタン方式』を採用しており、セーフティ機能は『ロック解除ボタンを押しながら起動ボタンを押す(起動したらロック解除ボタンは放してOK)』という方式になっています。
泡立て機の連続使用時間は120秒(2分)となっており上記PanasonicのMX-S300-Kと変わりはありません。この辺りがハンドブレンダーの限界なのかもしれませんね。
仕様参考:ブラウン公式
フードプロセッサーは洗浄の手間がありますので、少人数の食材を加工する分には時間短縮にはつながりにくいですが、多人数の家庭で食材の準備をするのであれば時間短縮はもちろん、作業自体も楽になります。
茶化した文調が好きな筆者ですが、すこしだけ真面目モードで話をしますね。
家事のうち『掃除』と『洗濯』は利き手や器用さを問わず行える仕事ですが、『炊事』だけは包丁など刃物の扱いが必要なため何らかの事情で利き手が不自由であったり、ある程度の器用さがないと難しい仕事です。
フードプロセッサーはまさに調理の補助を行う為の家電ですので、これを使うことで難しいとされる炊事もこなすことができます。洗浄の手間はあるので使い続けるのは決して楽ではありませんが、フードプロセッサーがあれば自分の能力の低さあるいは低下で、できない仕事があるという悔しさを解消する一助となってくれるでしょう。
スムージーはもちろん、タピオカやナタデココなどをミキサー蓋に付いている追加食材投入口から仕上げの前に入れれば強い食感を残したミックスジュースを作ることができます。そんな感じで色々アレンジできるので大量にもらった果物を飽きずに消費することもできますよ。
ミキサーで自分や子どもを含めた家族のための飲み物を作ったり、ミルで離乳食やふりかけなど作ったりする際に自分で食材を厳選できるのでこだわりの強い人はもちろん、健康に気をつけたい人におすすめです。
お子さんと一緒に楽しみながらオリジナルのジュースを作ってみることが食育のきっかけになるかもしれません。
筆者個人の感想ですが洗う手間まで考えた場合一番扱いやすいのは『ハンドブレンダー』ではないかなと思います。まずコレを買って実際に料理がはかどり、その機能に物足りなさを感じてきたのであれば本格的なミキサーやフードプロセッサーを買うのが良いかもしれません。
目的と機能に違いはあれど、ミキサーやフードプロセッサーは使いこなせれば大変便利な調理家電です。ですがその便利さが自分の思い描いていたものと合致しないとしまい込んでホコリをかぶりがちになってしまう家電でもあるので、購入前にはしっかりと使用状況を思い浮かべ、それに沿って使えるかどうか事前調査が大切です。
一番にチェックすべきポイントは『狙った食材が扱えるか?』でしょう。各メーカーのホームページから購入前でもそれぞれの製品の説明書をダウンロードして読めるので、購入前に対応あるいは禁止食材を確認することをおすすめします。