"No music, no life."が信条の「西の風」です。今回は、Bluetooth対応ワイヤレスイヤホン「SONY MDR-XB70BT[色 : ブラック]」の使用感を項目別にレビューしてみたいと思います。
まず外箱。てっきり上から開封するものと思っていたら、まさかの底面オープン型。底面を開けてパッケージを取り出すと製品同様、ブラックで統一された精悍な台紙に「MDR-XB70BT」が収まっておりました。
ちなみに保証書は —— 他のSONY製イヤホンでも同様なようですが —— 最上部からほんの少し顔を出しています。こんな大事なモノがこんなとこから顔出してていいんかい、と思ったりもしましたが、いずれにせよ保証書が箱を開けたとたんぱらりと落ちて行方不明、なんてことにならないよう念のため注意して開封したほうがよさそうです。カラバリはブラック(B) / レッド(R) / ブルー(L)の3色。Bluetooth対応密閉型イヤホン3モデルのひとつという位置づけになっています。
「MDR-XB70BT」と廉価製品との明らかな差は重低音の再現性。これに尽きると思います。比較のためいくつかおなじ楽曲で聴き比べてみたりしましたが、「MDR-XB70BT」のほうが明らかに中音域から低音域にかけての厚み、ボリューム感ともにすぐれています。これはもちろん、こちらのほうが高価格帯なのですから当然でしょう。「MDR-XB70BT」ではBluetoothで飛ばすために耳に届くのはAAC / SBCの圧縮音源ですが、ひと昔前のイヤホンの再生音とは信じられないほどの高音質で、圧縮音源という点はまったく気になりません。
・高域☆☆☆★★
とはいえ「MDR-XB70BT」ではじめて楽曲を再生したとき、同時に感じたのは若干、高音域がくすんで聴こえる、ということ。再生された高音域は重低音の迫力に押されるためか、最高音域の「輝き」が物足りず、再生音全体のバランスも少々よろしくない印象を受けました。ただしエレキギターやベース中心の音楽、あるいはモダンジャズ曲でとくに重低音を聴きたい ! という向きには、この点はあまり気になりません。むしろメリットになるでしょう。
・中域☆☆☆☆★
「MDR-XB70BT」は重低音重視タイプなので、中音域も厚みと幅があり、この点もじゅうぶん満足いくものだと思います。とくに管弦楽曲のように楽器配置から生まれる音響の立体感がクッキリ浮かび上がって再生され、これにはけっこうな快感をおぼえました。
・低域☆☆☆☆★
「MDR-XB70BT」で再生された低音はとても豊か。細かな表情の再現性にもすぐれているとも感じました。ベースを多用するジャズ楽曲だけでなく、クラシックのコントラバスやチェロといった低音弦楽器のピチカートの再現も秀逸で、ティンパニなど打楽器が活躍するフレーズでは「腹に響く」印象さえ受けました。「MDR-XB70BT」で聴く中音-低音域は、臨場感あふれる音場がかなり忠実に再現されていると思います。
・音の透明感☆☆☆★★
「MDR-XB70BT」は重低音重視設計のためか、全体的な音の透明感はイマイチかなという印象。もっとも顕著に感じられるのは人の声で、ネットラジオやポッドキャストなどで聴取する会話も低音強調型と言うか、やはり「こもって」聞こえます。
「MDR-XB70BT」のコントローラーにはハンズフリーマイクも内蔵され、スマートフォンでの通話もできる仕様になっていますが、通話音声の音質もやはりややくぐもった感じ。ただしはっきりと明瞭に聞き取れることには変わりないため、これもまた好みの問題ではあります。
「MDR-XB70BT」の実勢価格は8,000 ~ 10,000円ほど。もし 1. なによりも迫力ある重低音を最優先 2. 通常のケーブルタイプの取り回しの煩わしさがイヤ 3. ハンズフリー通話もしたい 4. ハイレゾ音質にはこだわらないが高音質設計のワイヤレスイヤホンがほしい、という向きであれば、購入候補に挙げてしかるべき製品かと思います。「MDR-XB70BT」の製品性能と価格とのバランスはほどよく釣り合っていると感じます。
「MDR-XB70BT」の外観をはじめて見たとき、スタイリッシュでありながら二律背反する要求を満たしたデザインだなあと感じました。SONY製品をよく知っている方からすればなかば常識なのかもしれませんが、「MDR-XB70BT」ではドライバーユニットが直径12mmというかなり大きめの設計になっています。密閉型イヤホンではどうしても本体をコンパクトにする必要がありますが、その分、重低音の再現性が損なわれる恐れがあります。「MDR-XB70BT」ではこの問題を、ドライバー本体からイヤピースをひねって突き出す構造にして解決しています。発想の転換の勝利、といったところでしょうか。機能性と見た目を両立させたすぐれたデザインだと思います。
「MDR-XB70BT」は密閉型(カナル型)なので、開放型のようにぐらつくことはありません。半面、耳の皮膚の敏感な方の場合、長時間の装着で耳に違和感をおぼえることがあるかもしれませんので、この点は注意が必要です。
「MDR-XB70BT」はスペアのイヤピース( SSからLまで4点 )が同梱されており、最適なサイズのイヤピースに交換可能で、この点の使い勝手もしっかり考えられています。
「MDR-XB70BT」はネックバンドで左右のイヤホンが連結されており、ストラップは滑りにくいフラットデザインのシリコン製。ウォーキングやジョギングていどのランニングならずり落ちるということはほとんどないでしょう。ただ、首まわりにストラップが巻きついている感覚が、ときには気になる … 場合はあるかもしれません(とくに夏場)。
「MDR-XB70BT」の左耳側には、Bluetoothアンテナとマイクの内蔵されたコントローラーが付いており、電源ボタンや音量コントロール、頭出し / 再生 / 一時停止ボタンもここに集約されています。Bluetooth 対応型イヤホンはまず最初に充電する必要がありますが、「MDR-XB70BT」の場合、USB ACアダプターは別売りのため、一度PCに接続して給電する必要があるのが面倒と言えば面倒な点。充電は3,4時間もあれば完了します。
電池残量関連では、携帯機器画面にもBluetoothアイコンのとなりに電池残量が表示されるのですぐに確認でき、これはとても便利。Bluetoothのペアリングもとくに問題はなく、スムーズに接続できます。
遮音性については密閉型のため、音漏れはほとんどありませんが、説明書にも記載があるように、耳を傷めないためにも音量には注意を払う必要があります。
「MDR-XB70BT」はながら聴き・じっくり聴きの、どちらの利用シーンでもじゅうぶん対応可能なオールマイティさを備えていると感じました。接続している機器から最大10m以内の範囲なら、どこでもイヤホンをつけて移動可能な点もBluetooth接続タイプならではの利点。スマートフォンだけでなく、iPadのようなタブレット端末から音楽を聴く場合も利便性はとても高いと感じました。また通話のときもハンズフリーで、しかも内蔵マイクは全指向性のためマイクの位置を気にせず使用でき、スマートフォンでの通話を多用するシーンにも向いていると思います。
以上、「MDR-XB70BT」を項目別に評価しましたが、価格・性能・使いやすさ・デザインのよさなど、総じてバランスのとれたよい製品ではないでしょうか。重低音を重視したい向き、またはハードロックやクラブなど重低音を強調する楽曲の再現にはとくに向いていると感じましたが、クラシックやポッドキャストなどの再現性にもすぐれていると思います。
ただ自分のように高音域のキラキラした感じ、ヌケのよさを求めたい向き、たとえば清冽なボーイソプラノのコーラスのようなマイクを通さない声楽の場合はすこし物足りない印象を受けました。半面、おなじヴォーカルでもたとえばブルーノ・マーズのようなバラッド系を聴くぶんには申し分ないでしょう(もっとも、これは個人の好みの範囲内ですが)。高音質が手ごろな価格で、しかもワイヤレスでケーブルを気にせず気軽に楽しめるという点ではひじょうにすぐれた製品だと思います。
「MDR-XB70BT」のおもな仕様 :
ヘッドホン部
型式 密閉ダイナミック
ドライバーユニット 12mm ドーム型(CCAWボイスコイル採用)
再生周波数帯域 4 Hz-24,000 Hz
質量 約 43 g(ケーブル含まず)
電源 DC3.7V、内蔵充電式リチウムイオン電池
電池持続時間(連続音声再生時間) 最大9時間
電池持続時間(連続通話時間) 最大8.5時間
電池持続時間(待受時間) 最大200時間
マイクロホン部
型式 MEMS
指向特性 全指向性
有効周波数帯域 50Hz-8,000Hz
付属品
USBケーブル(50cm micro USBケーブル)
イヤーピース
ハイブリッドイヤーピースSS,S,M,L(各2)
保証書、クリップ、取扱説明書、リファレンスガイド
Bluetooth
通信方式
Bluetooth標準規格Ver.4.1
出力 Bluetooth標準規格 Power Class 2
最大通信距離 見通し距離 約10m
使用周波数帯域 2.4GHz帯
変調方式 FHSS
対応Bluetoothプロファイル A2DP / AVRCP / HSP
対応コーデック SBC、AAC
対応コンテンツ保護 SCMS-T方式